◆ 世界明るくなった
午後7時、旭区の「市民交流センターあさひ西」。教室の窓から夕日が差し込む。「うわあ、夕焼けがきれいやなぁ」。いくつもの歓声が上がる。学ぶ人、それを支える人、30人近い人たちが毎週火曜の夜、ここの識字教室に集まってくる。

教室はほとんどマンツーマン形式。國島さん(前列[右]、山本さん(同[中])ら

「きょうは何するの~」。國島カヅ子さん(72)が机のプリントをのぞきこんだ。漢字を組み合わせて四文字熟語に仕上げるというもので、みな辞書を引き引き、空欄を埋めていく。
「辞書を引くのも勉強。最初は難しくてね」と國島さん。辞書を片手に「うーん」と唸りながら問わず語りに振り返る。

「42から鉛筆持ったんや。名前かけたときはホンマに嬉しかったよ。識字に来る前、家で自分の名前を書いてみたことがあったけど、書き順もわからんから字にならんかった。悔しくて泣いたわ。字を知らん苦しみがどれほどか、わからんと思う」
10歳で子守りに出て、12歳から縫製工場で働いた。学校は一度も通っていない。

「赤ちゃんおぶって学校の窓からのぞいて、先生に見つかったときは恥ずかしかったなあ。一度だけ母親に『学校行かせてくれ』と言ったことがあった。母親は『堪忍してや』って」
同級生に誘われ、識字教室に。教室のムードメーカー的存在の國島さんだが「字を覚える前は人と会うのが嫌で、何となく暗かった」という。

「字を知って世界も明るくなった。字を知らんかったら考え方もわからへん。それにな、若い頃は、早く年とりたいと思ってた。年取ってたら、人に『書いて』って字を書いてもらっても恥ずかしくないやん。でも人間は勝手なもんで、いまはもっと若くなりたい。目がよければ字ももっとよく読めるから」
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