「国定価格の品は質が悪いものばかりだ。『龍城』タバコなんて一番の安物で、貧乏人だけが吸うもの。今の北朝鮮の人たちは、中国や日本、韓国の高品 質の物資に触れているから、純国産品には見向きもしない。平壌のエリートたちは第一百貨店なんか行きませんよ。貧しい人か地方から平壌に来た人が見物に行 くぐらいだ」。

国定価格商品をわずかしか供給できないとなると、百貨店の棚は空っぽになってしまう。そこで中国製品が置かれるようになった。

「〇五年ごろには中国製品が七割を超えていたと思う。でもいつもその七〇〜九〇%は陳列するだけで売らないのだ」
と、リ・サンボン氏は言う。百貨店はそれでも見栄えよく整えられているが、それ以外の国営商店も低調なのは同様だ(国営商店の不振ぶりについては、リンク先記事中の「国営商業はなぜ失敗するか」[2008年取材]に詳しい)。「国営商店の販売員は、夏はハエ追いが仕事だ」と、リ・サンボン氏は切って捨てる。

ほとんどの国営商店では、今では中国産品を置くようになっている。事情は百貨店と同じで国産品だけでは売場ががらんどうになってしまうからだ。中国 産品は、貿易商社から回してもらったり、親戚訪問者や華僑など中国と往来する人たちから卸してもらったものだ。しかし、百貨店と同じく、決められた価格で しか売らない。販売員には決定権もないし、やる気もない。生活を賭けた「真剣勝負」のジャンマダンの商売人に太刀打ちできるはずがない。国営商業が市場パ ワーに負けてしまっていることは、その活気の差を見れば明らかだろう。(つづく)

<リムジンガン>シリーズ 北朝鮮の市場経済 一覧