◆一写真家に対する写真展はく奪行為
新宿ニコンサロンで予定されていた韓国人写真家、安世鴻の写真展への中止通告をめぐる動きは、「慰安婦問題を巡る騒動」ではない。「ある写真家とある企業のギャラリーとの間で起きた、写真展示をめぐるトラブル」でもない。
「写真機器メーカー・ニコンが示した、一写真家に対する写真展示はく奪行為」だからこそ、私自身は「重大問題」だと認識している。そして、「ニコンが主張する中止理由」とは、写真のみならず、映像や絵画なども含めて、あらゆる表現行為とその機会にとって、"危険"な妨害だと思ったからこそ、私はこれまで対応や発言を続けてきた。

ニコンが行ったその行為と説明は許されることなのだろうか。
それまで「諸般の事情」「総合的に考慮した結果」とだけ説明していたニコン側が、展示を中止した理由を述べたのは2012年6月10日付の書面だった。安世鴻が東京地裁に申し立てた仮処分(契約に基づく施設使用権)に対して提出した答弁書だ。
「(安氏による)マスコミを通じた政治活動が行われている」
「本件写真展も『政治活動』の一環」

「『政治性』を有することが明らか」
そして、「ニコンサロン写真展の本来の目的に合致しないことが明白となったので、展示という便宜の提供を中止することとした」と主張している。そして、「消極的には」と補足しているものの、「政治性が付加されていないこと」が、ニコンサロンの応募条件の要件として含まれているとまで書いてきた。

当初は、「右派団体による抗議活動や写真展中止を求めるネット上での書き込みが殺到したことによって、ニコンの会社上層部は中止という自粛の判断をした」というのが大方の見方だった。
ところがニコンは、中止の「理由」を、あたかも安世鴻本人の方に非があるような説明をしてきたことで、「新宿ニコンサロン中止問題」はその構図が大きく変化する。
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