リ・ハナさんは、「なんとかここで生き延びなければという想いが強くありました」と話した。写真:南正学

 

◆自分の力で生き抜く気持ちと能力を身につける必要性を切実に感じた
:脱北者として日本で暮らすということは、簡単なことではないと思いますが。
:他の脱北者たちも同じだと思いますが、私には帰る場所がありません。どこにも経済基盤もありません。だから、なんとかここ日本で生き延びなければという想いが強くあります。

脱北者の中で、やりたいことをして余裕をもって暮らす人は少ないです。まずは日々の生活のために生活基盤を作らなければならないからです。

大学に行くことができた私は、とても恵まれた環境にありましたが、多くの脱北者にとって、自分は勉強が得意なのか、商売に向いているのか、そういう自身の潜在能力を引き出すためにチャレンジをするような余裕も暇もない場合が多いのです。

そう思うと悲しくなるときもありますが、自分の運命や環境を恨んだりしている時間はありません。みなさん、北朝鮮に残っている親族の心配や日々の暮らしだけで精一杯なのです。

:韓国ではなく日本行きを選んだことを後悔したことはありませんか?
:後悔したことはありません。日本に住んでいる他の脱北者たちとこんな話をします。日本に来たおかげで外国語を1つ習得できたのだからよかったと(笑)。韓国でも日本でも、結局はその人次第だと。

日本に来たおかけで、自分の力で生き抜く気持ちと能力を身につける必要性を切実に感じ、努力することができました。私の両親は日本生まれの「元在日朝鮮人」ですが、脱北した私たちを受け入れてくれた日本にとても感謝しています。(つづく)
【リ・ハナさん】
1980年代半ば、北朝鮮北西部の都市で生まれる。 両親は日本からの「帰国事業」で北朝鮮に渡った在日朝鮮人2世。中国に脱出後、2005年日本に。日本入りした脱北者として初めて大学に入学。今年3月卒業した。近著に「日本に生きる北朝鮮人 リ・ハナの一歩一歩」
書籍「日本に生きる北朝鮮人 リ・ハナの一歩一歩」の詳細

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