記者: 幹部たちの考えはどうか?
女性: 上の幹部や金持ちたちは、全然怖がっていない。戦争できないと知っているからだ。ただ政府のやれというとおりにふるまっている。今、アイツ(金正恩)がやっと掴んだものを全部捨てるような、間抜けなマネをするだろうか。

別の北部の取材協力者も、当局による講演会が開かれたとして、次のように述べた。
「『戦争が起こるなどと恐れなくていい。もし起こっても一夜明ければ終わるから』という講演があった。4月1日から市場も通常通り開かれるようになったし、中国国境の税関も通常通りに開かれた。国内の緊張はずいぶん緩んだ。戦争なんて起こるはずないと思う」
ふたつの都市からの情報であるが、金正恩体制が、対外的に軍事的緊張を高めている一方で、国内では緊張緩和に動きはじめたものと思われる。

その背景は、一つ目に2月の核実験強行以降、かつてないほど強く戦争の危機を煽って、住民に対する統制強化と動員態勢を続けてきた結果、商売行為に大きな支障が出るなど、生活悪化で民衆に不満が高まっていることがあると思われる。
二つ目に、住民たちに戦争が起こるという恐怖を宣伝した結果、不安心理が広がってしまい、これが脱北や犯罪の増加など社会秩序の混乱に繋がりかねないことを懸念していると思われる。

アジアプレスでは、中国キャリアの携帯電話を北朝鮮国内に入れ、取材協力者から内部情勢の報告を受けている。

(参考写真)「恵山市場」で暖を取るコチェビ(ホームレス)の少女。後ろに見える少年もコチェビだ。2012年11月北朝鮮国内の協力者が撮影(アジアプレス)

(参考写真)「恵山市場」で暖を取るコチェビ(ホームレス)の少女。後ろに見える少年もコチェビだ。2012年11月北朝鮮国内の協力者が撮影(アジアプレス)

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