大阪市役所前で抗議行動をする市民ら(2013年5月17日)

 

橋下氏が会見で「慰安婦」問題について言及したのは昨年8月以来のこと。この8月の会見で橋下氏は、「慰安婦という人たちが軍に暴行、脅迫を受けて連れてこられたという証拠はない」として「証拠があるなら出してほしい」と言い放った。橋下氏は「慰安婦」募集や移送などに強制性があったことを認めた1993年の「河野談話」も批判、見直しを求める立場だ。
しかし、もともと「慰安婦」の存在がクローズアップされたのは1991年に韓国の故・金学順(キムハクスン)さんが実名で名乗り出たのがきっかけである。

「民間業者がやったこと」だとシラをきる日本政府の答弁に憤り、「私が生き証人」だと半世紀もの沈黙を破ったのだ。その勇気に続き、韓国国内はもとよりアジア各地の被害女性が声を上げ、ついに日本政府も河野談話を発表するにいたったのだ。

今回も狭義の「強制連行」に矮小化して河野談話そのものまで否定するような論調を展開している日本のメディアもあるが、曲解もはなはだしい。
多摩市の保田千世さん(66)は長く交流を続けてきた黄錦周(ファンクムジュさん:2013年1月、90歳で死去)を主人公にした韓国の児童図書を昨年、翻訳・出版した。黄さんは金学順さんに続いて実名で名乗り出た被害者女性だ。

保田さんは今回の橋下氏の一連の発言は「女性はもちろん、男性も馬鹿にしている」と憤る。元高校教師の保田さんは90年代半ば、黄さんの半生を聞き書きした新聞記事を使って授業をした。そのときのある男子生徒の感想文を思い出したという。
「自分は女性を見ると性欲が湧く年頃だが、記事を読んで、だからといってなんでもしていいわけではないとわかった」という内容。「高校生だってわかる。なのに橋下市長は、男は性欲、レイプを抑えられない、そういう頭になっているのでは」
(つづく)
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