◇石綿工場の社宅住まいで幼少時から異変 「どこへ行くのも酸素が離せません」
誰もが中皮腫になるわけではない。しかし、誰もが中皮腫になる可能性がある。目に見えないものを知らない間に吸い、何十年もの潜伏期間を経て病気になる。そのアスベスト(石綿)の病気は今の医学では治すことが出来ない。すなわち、病気を宣告されることは「後は死を待つしかない。」ということ。アスベスト被害の責任を国に問う訴訟の原告代表・岡田陽子さんに被害の実態と自身の健康状態を5月末、聞いた。
(聞き手 ラジオフォーラム 鈴木祐太 )

:今の健康状態はいかがですか。
岡田:今は24時間、酸素を吸ってます。どこへ行くのも酸素が離せません。アスベスト関連の裁判に行ける時は行きます。外へ出ない時には一日家の中にいてゴロゴロしています。雨戸は重たいから開けたら開けっ放しです。子どもがいるので、食事は一応つくりますけど、掃除が出来ていなくて、お客さんがきたら困るなという状態の家です。掃除をしないといけないとは思うけれど、体が動きません。

:最近、特に困ったことはありますか。
岡田:睡眠薬が切れると全く眠れませんが、飲んでいる時でも4時間ぐらいです。この前、薬を切らしてしまって、全く眠れませんでした。3日も寝てないせいで、余計に体調の方がバランスを崩してしまって、呼吸もしんどく、動悸もあり、血圧も上がってしまいました。私の病気は今後どうなるのか心配です。57才で血圧230だと笑われそうですが、本当に苦しいです。休憩をするとマシになるけど、少し動くと230まで上がって動けません。その上に、咳をするから余計に血圧が上がります。二人分の茶碗を洗うのに、台所に長く立つとしんどいので、一度、休まないとできません。何をするのでも休憩とワンセットです。普通の人がすることが出来ないです。

:何歳から体調悪くなったのですか?
岡田:子どもの頃から少しずつ悪くなっています。いい状態というのが子どもの頃からないので、息苦しいということを知りません。だから、しんどい、という表現しかできない。

:何をする時が苦しいですか。
岡田:普段はお風呂に入るのも腰までしか入れません。だから冬でも半身浴です。胸まで浸かるとお風呂の水圧で苦しい。普段から圧迫された感じがあるので、お湯に入ると本当に苦しい。一瞬だけお湯に浸かったらそれで終わり。あとは腰から下だけしか浸かりません。
淡々と話す岡田陽子さん。しかし、その言葉一つ一つから、苦しみや怒りが伝わってくる。岡田さんは工場の社宅で生まれ育ち、両親は共に石綿労働者で、石綿が原因で亡くなっている。一審判決では元従業員には賠償を認めたが、近隣住民である岡田さんは認められなかった。
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石綿=アスベストとは
アスベストは天然に存在する鉱物の一種で、耐熱性、電気絶縁性に優れ、摩擦、酸とアルカリに強く加工しやすい利点がある。その一方で、粉塵を大量に吸い込 むと、20~40年の潜在期間を経て中皮腫や肺がんなどを引き起こす。そのため、「静かな時限爆弾」と呼ばれている。アスベスト全体の約8割は、ビルや工 場などの建材に対して使われており、これらの建物の解体のピークは2020年頃と言われている。

泉南アスベスト訴訟とは・・・
戦前からアスベスト紡織産業が盛んだった大阪府南西部・泉南地域の人々が「石綿肺にかかったのは国が規制を怠ったため」として06年に国家賠償請求訴訟を 提起。一審は、「国がアスベストの危険性を認識していた時期に被害を防ぐ規制権限を行使しなかったのは違法」として原告が勝訴したが、二審の大阪高裁では 敗訴。現在最高裁に上告中。第2陣訴訟は一審で原告が勝訴したが、原告、国とも控訴。高裁判決は8月23日の予定。

岡田陽子さん(57)
父と母が働いていた泉南の濱野石綿の社宅で生まれる。陽子さん自身は、アスベスト工場で働いた経験はなく、元気な時は看護師をしていた。原告団代表。