R:今、海から獲れるものに関して、基準値が超えるものが続々出てくるという状況にはなっていないと言われていますが...。

小出:例えば、私は2011年3月11日からずっと汚染水が流れ出ていたと言っているわけですが、流れている汚染水は多分福島第一原子力発電所の敷地の地面にしみ込んでいるわけですね。土というのは、放射性物質を捕捉しやすい性質を持っています。セシウム137、或いは、ストロンチウム90という物質は土に捕まりながら、少しずつ少しずつ海に流れているのだと思います。

R:一気に海に流れ出ているわけではないのですね。

小出:はい。もともと放射能で汚染された水は原子炉建屋やタービン建屋の地下、あるいはトレンチ、ピット、立坑と呼ばれる地下の坑道に溜まっていて、そこから漏れていました。そして最近は、一度はタンクに溜めたものが漏れているのです。それらの汚染水に含まれていた放射性物質は全量すぐに海に流れ出たわけではなくて、今、福島第一原発の敷地の中が放射能の沼のような状態になってしまっているのです。これから長い時間をかけて、少しずつ少しずつ海に流れていくことになると思います。

R:私たちは、どれくらいの間、海から獲れるものを注意し続けなければならないのでしょう。

小出:セシウム137もストロンチウム90も、半分に減るまで30年、それから30年経つとまた半分。つまり、60年経ってようやく4分の1になる。それからまた30年、つまり、90年後には8分の1に減ってくれます。それでもまだ、10分の1にはならないということです。

私のような放射能を取り扱う人間は、元々の汚染の1000分の1になるまで、なんとか仕事をしようと思うのですが、1000分の1になるのは、半減期の長さのおよそ10倍の長さが必要になります。つまり、セシウム137、ストロンチウム90に関して言うならば、300年後です。そのぐらいの期間は、汚染というものを調べて被曝をしないように注意していかなくてはならないでしょう。

安全と言えるわけではないが、少なくても300年は監視を続けなければならない。この年月を縮めることは、現代の科学では不可能だ。恵みの海を汚し、その恩恵を未来の世代からも奪った罪深さを、改めて思い知るほかない。

「小出裕章さんに聞く 原発問題」まとめ

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