普通に暮らしている人もあまりスーツを着なくなっているので、服装面でもどんどん境目がなくなっている。ズボンがボロボロになって、髪の毛が束になっているような人だけがホームレスではないんです」

-現在のホームレス支援の問題点は何でしょうか。
「アメリカなどと比べて、日本には行政のシェルターがほとんどない。シェルターというのは、雨露を凌ぐ場所であると同時に、支援の入口になるものです。シェルターが必要な人たちは、支援の必要な人たちでもある。そうした役目を日本では行政ではなく、ネットカフェをはじめとする民間が肩代わりしている。だから、支援が難しく、支援の手が届きにくい」

社会活動家の湯浅誠さん(撮影 アジアプレス南正学)

社会活動家の湯浅誠さん(撮影 アジアプレス南正学)

◇貧困の「顕在化」が必要
湯浅誠さんは日本の行政の支援が不十分であると指摘した。そこで、JR大阪駅ホームレス連続襲撃事件から1年たった今、大阪市保健福祉課と、大阪府警広報課に話を聞いてみた。

保健福祉課では、ホームレスに対する福祉の窓口を作るとともに、仕事を斡旋する循環相談員が支援に当たるといったことを実施しているという。大阪府警も、1年前のJR大阪駅襲撃事件後、通常警戒を強化するとともに、非行防止の啓発強化を行っているという。どちらも、支援・警備・啓発といった既存の活動の強化に留まっている。役所の壁を超えて横断的に対策をする、連携をするということには至っていない。

湯浅さんの言うとおり、貧困問題は見えにくい。だから、支援が行き届きにくくなっている。ホームレスの人だけでなく、非正規雇用などの低所得者に対しても、困った時にすぐに相談できる窓口や、身を寄せるシェルターを作る、といった支援の強化が行政に求められている。見えにくい貧困を「顕在化」するためにも必要な措置だ。
(おわり)

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