◇海洋汚染地図こそ必要

R:国は福島第一原発事故の矮小化をずっと図ってきたわけですが、どれくらいの汚染があるのかということについても、セシウムを始めとする数少ない放射性物質に触れているだけです。リアルな日本の汚染地図を作る計画はないのでしょうか。

小出:ただ、空気中に出てきたものの中で圧倒的に多かったものは、私たちが希ガスと呼んでいるものなのですが、 これは地面を汚染するという性質はありませんので、汚染地図を作ることはできません。その次に大量に出てきたのはヨウ素という放射性物質ですが、これも寿 命が短いために、すでにもうほとんどなくなってしまっています。次に問題なのがセシウムであって、セシウムの汚染地図は日本の政府も公表していますし、私 たちも出来る限り測定をして、政府の発表が正しいかどうかぐらいのチェックはしています。

ではそれ以外に、何が問題かというと、皆さんが気にしているのはストロンチウム90とかプルトニウム239というような放射性物質だと思うのです が、大気中に放出された量を問題にするのであれば、ストロンチウム90とかプルトニウム239はむしろ、小さな問題だと思います。

R:では、改めて汚染地図を作成する必要はないということですか?

小出:ストロンチウム90やプルトニウム239といった放射性物質を問題にするのであれば、恐らく水に溶けて海 へ流れていますので、海のストロンチウム90の汚染地図、海のプルトニウム239の汚染地図というものを、これから作らなければならないと思います。た だ、残念ながら、私たちの力はそこまでいっていないということです。大変申し訳ないと思っています。

R:大気や土壌の汚染より、汚染水による海洋汚染の調査の方が、まだまだ手付かずだということですね。あれだけの汚染水を放出していますから、これは日本だけでなく世界中に迷惑がかかっているわけですよね。

小出:1986年には旧ソ連のチェルノブリ原子力発電所で大きな事故が起きましたが、その時には「地球被曝」と いうような言葉がつくられました。まさに、日本の福島のときも、福島だけが汚染されているのではない。日本中が汚染されたわけですし、世界中が福島からの 放射能で汚れてしまったという状況になっているのです。

 

「小出裕章さんに聞く 原発問題」まとめ