福島第一原発事故の発生後、放射能の汚染地域では、小さな子どもを持つ親たちが常に不安を抱えながら暮らしている。放射能から子どもを守るべきだと 発言を続ける京都大学原子炉実験所・助教の小出裕章さんに、放射能の影響はどのように人の身体を蝕むのか、なぜ子どもは大人より放射能の影響を受けやすい のか解説してもらった。(ラジオフォーラム

京都大学原子炉実験所・助教の小出裕章さん

京都大学原子炉実験所・助教の小出裕章さん

ラジオフォーラム(以下R):福島第一原発事故の放射能による子どもたちへの影響について伺います。子どもというのは放射能の影響を受けやすいと言われていますが。

小出:放射線というのは子どもであろうと大人であろうと、またどんなに低線量であろうと危険です。ただし、同じ被曝をした時に、子どもは大人に比べてはるかに大きな危険を背負わなければいけません。

生き物というのは自分の遺伝情報というものをみんな持っています。人間の子どももそうです。はじめの命というのは母親の卵子と父親の精子が合体して できた、たった一つの細胞であり、そこに遺伝情報が書き込まれています。細胞分裂をはじめると、はじめ1個だったものが2個に、それが4個になっていくと いう形で、どんどん大きくなっていきます。その時に、遺伝情報を決して間違えることなく、複製して渡していくということをやりながら生き物は生きているの です。

どんどん細胞分裂を繰り返して、いよいよ胎児として生まれてくる時には、一丁前の人間の形をして生まれ落ちてきます。そしてさらに細胞分裂を繰り返 しながら、大きくなっていくわけです。毎日見ていたって面白いほどに赤ん坊というのは成長していくわけですし、ちゃんと遺伝情報を複製しながら命を維持し ようとしています。そのような時期に細胞に傷を受けてしまう、遺伝情報に傷を受けてしまうと、傷を受けた遺伝情報を次々と複製してしまうということになり ます。だから、成長途上にある子どもというのは、一番放射線に敏感だということになってしまいます。

R:チェルノブイリ周辺では甲状腺がんの子どもたちが急増したというデータがあります。母乳や水、それから食べ物を介して放射性ヨウ素が子どもたちの甲状腺に蓄積されたと言われていますが、放射性ヨウ素とはどのようなものなのか説明していただけますか。

小出:人間は甲状腺というところでホルモンをつくっています。甲状腺は喉の両側にあるとても小さな臓器で、そこ でホルモンをつくりだして全身に送り出しているわけです。人間はそのホルモンをつくるためにヨウ素という元素を必ず必要とする生き物です。ただし、自然界 にあるヨウ素は、ヨウ素127という番号のついたヨウ素で、これは放射能を持っておりません。

ところが、人間が原子力というのを利用してしまいますと、127番ではない131番であるとか132番、133番という様々な番号のついたヨウ素を作ってしまいます。それらのヨウ素は放射能を持っているのです。

人間の側からみると、元々あった127番のヨウ素も人間が新たに作り出した別の番号のヨウ素も、同じヨウ素にしかみえません。そのため、そういうも のが環境に出てしまいますと喜んでそれを甲状腺に蓄積していってしまうのです。そうすると、甲状腺が傷を受けて甲状腺腫瘍、あるいは甲状腺がんというもの をつくってしまうことになります。