◇配給は金正日生誕日などに年数回 市場では豚足も売買

北朝鮮の市場では兎、羊、アヒル、鶏、七面鳥、犬など多様な肉類が売られている。中でも豚肉は安い上に、脂質やタンパク質など庶民に不足がちな栄養 素も高く、一番人気を誇る。北朝鮮内部で取材協力者が秘密裏に撮影した写真を元に、生活事情に迫るシリーズ。今回は庶民のささやかな贅沢、豚肉の消費現場 を紹介する。(ペク・チャンリョン)

北朝鮮では、豚肉を含む国民の食料品の一切を国家が供給する「食糧配給制度」を採ってきた。この制度は建前上、今も続いているが、90年代から続く 経済の大停滞の中で有名無実になって久しい。最も配給状態が良い平壌でも、豚肉の配給というのは、故金日成主席や故金正日総書記の誕生日など、「名節」と 呼ばれる年に数度の特別な祝日に、市場価格よりもはるかに安い国営価格で売られるのがやっとであった。それすらも限られた量しか無いため、早い者勝ちだ。

豚肉を切り分ける商売人の女性たち。2012年11月北朝鮮北部の国境都市の市場で。撮影アジアプレス(以下2枚も同様)。

豚肉を切り分ける商売人の女性たち。2012年11月北朝鮮北部の国境都市の市場で。撮影アジアプレス(以下2枚も同様)。

 

結局、庶民は豚肉を食べたくなれば、市場を訪ねるしかない。通常、肉売り場は市場の一角に固まっており、ぶつ切りになった大ぶりの肉の塊が無造作に置かれ ている。豚肉を売る女性商売人たちは、自ら豚を解体して精肉に加工する技術も持ち合わせている場合が多い。プロ顔負けだ。

豚肉を切る。皮付きなのが分かる。日本や韓国の肉店と同じように、客の要望によって量や切り方を調整してくれる。

豚肉を切る。皮付きなのが分かる。日本や韓国の肉店と同じように、客の要望によって量や切り方を調整してくれる。

 

北朝鮮の豚肉は、皮付きが基本だが、客が望めば皮を剥いでくれる。この内部映像が撮影された当時、豚肉の価格は1キロ1万7000ウォン(約2ドル)。米がキロ6000~7000ウォンだったことを考えると、庶民にとっては易々と買える値段ではない。高嶺の花だ。

市場の片隅の売り台には、「スンデ」と呼ばれる朝鮮式の腸詰が無造作に積まれている。右に見える白いポリタンクの中身は酒。コップ単位で売られている。

市場の片隅の売り台には、「スンデ」と呼ばれる朝鮮式の腸詰が無造作に積まれている。右に見える白いポリタンクの中身は酒。コップ単位で売られている。

 

「捨てるところが無い」と称される豚だが、北朝鮮でも事情は変わらない。様々に加工して市場に並ぶ。「スンデ」は腸にもち米などを詰めて蒸したもの。酒の肴として人気がある。

豚足を売る女性たち。生のものもあれば、茹でられたものもある。2013年9月咸鏡北道清津(チョンジン)市、水南(スナム)市場で。撮影アジアプレス。

豚足を売る女性たち。生のものもあれば、茹でられたものもある。2013年9月咸鏡北道清津(チョンジン)市、水南(スナム)市場で。撮影アジアプレス。

★新着記事