2013年の終わりに、原子力規制委員会の有識者会議は、帰還する住民の年間の被曝放射線線量に関して、「20ミリシーベルト以下であれば健康上に 大きな問題はない」とする指針をまとめた。被曝は少量であっても健康に悪影響を与える可能性があると主張し続ける、京都大学原子炉実験所助教の小出裕章さ んに、この指針について見解を聞いた。(ラジオフォーラム

ラジオフォーラムの収録で語る小出裕章さん

ラジオフォーラムの収録で語る小出裕章さん

ラジオフォーラム(以下R):2月23日には政府の原子力対策本部が、20キロ圏内としては初めて、福島県田村市都路地区の避難指示を4月1日に解 除すると発表しました。これに関しても、年間被曝線量が20ミリシーベルト以下に下がっていることを理由の一つとして挙げています。改めて、この20ミリ シーベルトというのはどういう数字でしょうか。

小出:ご存知だと思いますが、この日本という国では普通の人々は1年間に1ミリシーベルト以上の被曝をしてはいけないし、させてもいけないという法 律がありました。それに対して、私のように放射線を取り扱いながら仕事をし、給料をもらっている人間は1年間に20ミリシーベルトまではいいだろうという 法律があったのです。

では、なぜ1ミリシーベルトや20ミリシーベルトという数字が決まったかというと、それまでの被曝なら安全だから、ではないのです。被曝というのは どんなに微量でも危険があるということが現在の学問の到達点です。20ミリシーベルトは当然危険だけれども給料をもらっているのだから我慢をしなさい、と いって決められたわけです。

1 ミリシーベルトにしても、危険がないわけではない。けれども、この日本で住むからにはその程度は我慢をしなさい、ということで決められていたのです。です から、1ミリシーベルトも20ミリシーベルトも科学的に安全な基準でもなんでもなくて、いわば社会的に決められた値だったのです。

R:それでは、今回原子力規制委員会が帰還住民の年間被曝量として「健康上大きな問題はない」とした20ミリシーベルトという数値も、社会的な値というわけですか。

小出:その通りです。残念ながら、福島第一原子力発電所の事故が起きてしまい東北地方と関東地方の広大な地域が放射能で汚されてしまいました。そう なると、今までの法律はもう守ることができない、今は平常時ではなくて、緊急時なのだから、住民に被曝を我慢させるしかないというふうに国が踏んだわけで す。

R:国際的に見て、それはおかしいのではないですか。

小出:世界にはICRP(国際放射線防護委員会)とか、IAEA(国際原子力機関)という組織があって、事故などの緊急時には1 ミリシーベルトから20ミリシーベルトぐらいの被曝はもう我慢させなさいという勧告を出しているのです。それを利用して日本でも20ミリシーベルトぐらい までは我慢させてしまおうということを決めたわけです。

R:緊急時には仕方がないとのことですが、福島の事故から3年が経とうとしています。緊急時は何年続くのでしょうか。

小出:分かりません。ICRPやIAEAが言及していた緊急時というのは、ごく短期を想定していたと私は思います。けれども、福島の事故で被曝をしている人たちは、これからもおそらく何十年という単位で被曝をしていきますので、これを緊急時とは呼べないと思います。