日本では原発の再稼働に向けた動きが加速しているが、世界に目を向けると脱原発の動きも見られる。なかでも、日本の原発政策に大きな影響力を持つアメリカの原発事情について、京都大学原子炉実験所・助教の小出裕章さんに聞いた。(ラジオフォーラム)

ラジオフォーラムの収録で語る小出裕章さん

ラジオフォーラムの収録で語る小出裕章さん

◇核燃料サイクルも放棄

ラジオフォーラム(以下R):日本は今、稼働中の原発がゼロの状態が続いていますね。
小出:そうですね。嬉しいことです。
R:しかしながら、安倍政権は再稼働に向けた動きも着々と進めています。一方でアメリカですけれども、実はアメリカ は、2011年以降、4か所5基の原子力発電所の閉鎖が決まっており、原発を縮小する方向にあるということです。この流れを、どのように理解したらいいで しょうか。

小出:原子力というものに世界中が夢をかけた時代がありました。1960年代ぐらいからですけれども、それを牽 引してきたのはもちろん米国です。米国は、60年代から70年代はじめにかけて、猛烈な勢いで原子力発電所の運転を開始させましたし、たくさんの原子力発 電所を建設しようとしました。

米国で、運転中と建設中と計画中の原子力発電所の数を合わせた合計の数が一番多かったのは1974年で、すでに40年も前のことです。しかしそれ以 降、計画中のものはほとんど全てがキャンセルされ、建設中のものも、9割以上建設が終わっていたものすらキャンセルされてしまって、どんどん原子力から撤 退を始めるという時代が、米国では40年前から始まっていたのです。

79年に米国のスリーマイル島原子力発電所という所で、また大きな事故が起きてしまいまして、米国は決定的に原子力から撤退するという道にすでに 入っていたのです。ですから、確かに米国は100基を超える原子力発電所を作りましたけれども、すでに何十年にも渡って全く増えていませんし、これからは 次々と廃炉になっていくという、そういう時代なのです。

R:なぜ、その先頭ランナーのアメリカが原子力から撤退に向かうことになったのでしょうか

小出:様々な理由があります。もちろん私自身も原子力に夢をかけました。原子力というのは、未来のエネルギー源 で無尽蔵に資源があるという宣伝もありましたし、経済性がもの凄い、値段がつけられないぐらい安い電気を発電できるというような宣伝もありました。原子力 発電所だけは絶対に事故を起こさないというような宣伝もありました。しかし、それら全てがウソだということが分かったわけです。

原子力の資源はまことに貧弱だし、経済的にも採算が合わない。そして、安全でもないということが次々と明らかになってきてしまったがために、米国は原子力から撤退するということになったのです。

もう一つ重要なことは、「原子力」と日本で呼んでいるものは基本的に「核」と呼んでいるものと同じであり、原子力を世界中に広めてしまうと、核兵器の拡散を防ぐことができなくなるということに米国は気がついたわけです。

いわゆる再処理という、原子力発電所の使用済み燃料の中からプルトニウムという物質を取り出して、それをまた燃料に使おうという計画もあったのです が、そんなことをすると到底、核拡散を防げません。だから、もう70年代の末にカーター大統領は商業的な再処理は米国自身も「放棄する」という決定をして いるのです。

そうなると原子力には何のメリットもないということで、どんどん来たわけです。最近になると米国では、いわゆるシェールガスというのが大量に出るということが分かりまして、もう原子力なんてやる意味が全くなくなってしまったわけです。

R:アメリカの脱原発は、このシェールガスが大量にあって開発が進んでいるという、アメリカだけの特殊な事情だと考えた方がいいのでしょうか。

小出:いいえ。現在は米国とカナダがシェールガスを大量に掘り始めたという段階なのですが、たぶん、他の国でも これから開発すればシェールガスが出る所はあると思いますので、そういうところではやはり原子力という選択は、ますます無くなっていくだろうと思います。 日本がどうなのかはよく分かりませんが、日本は海洋国家であって、たぶんメタンハイドレードが大量にあるはずです。

R:海の底にあるガスですね。

小出:はい。そういうものが利用できるようになれば、原子力からの撤退が日本でも加速するだろうと思いますが、今の段階でそれを見通すことはできません。