R:1号機から3号機の核燃料棒も結局、取り出さなければいけないわけですか。

小出:東京電力や国は取り出すと言っています。ただし、取り出そうとすると作業員が大量の被曝をすることになる と思います。取り出すといっても、100のものを100取り出すということはできないと私は思います。例えば、50だけ何とか取り出したとしても、50は 取り出せないまま残ってしまうわけです。私としては取り出し作業を諦めてそのまま石棺というもので閉じ込めるというのが、恐らく一番現実的な方法だと思い ます。

R:京大原子炉実験所OBの海老沢徹さんは「石棺化をしたら、燃料棒を取り出せなくなる。コンクリートで固めた ら、また水が入ってきて汚染水の問題が発生するかもしれない」というご指摘をしていまして、石棺化には簡単には同意できないとおっしゃっています。小出さ んはどうお考えですか。

小出:海老沢さんのご指摘のとおりだと思います。一度、石棺をつくってしまいますと、熔け落ちた炉心を取り出す ことができなくなります。全ての炉心を回収することを諦めるという前提に立って石棺化するわけです。石棺で覆ったとしても、また汚染水が出てきてしまう可 能性もあります。ですから、どうするのが一番良いのかは、未だわからないという状態にあるわけです。本当であれば、なんとか私も取り出したい。けれども、 それをやろうとすると、労働者の被曝が大量になってしまうと私は思いますので、諦めるしかないのだろうな、と思っています。

◇チェルノブイリの石棺化の教訓とは

R:一度石棺化をしたチェルノブイリですが、今は第2の石棺化の工程に入っています。このチェルノブイリから学べることはどんなことでしょうか。

小出:ようやくにしてチェルノブイリでも石棺というものをつくったのですね。ただ、事故から28年になりました けれども、一度つくった石棺がボロボロになりまして、そこをもう一回り大きな石棺で覆うしかないということで、今、おっしゃったように第2の石棺をつくっ ているのです。

ですから、福島で、私の予想しているように石棺をつくるとして、それが10年後に出来るのか、20年後に出来るのかよくわかりませんが、一度つくっ たとしても、それがボロボロになってきますので、何十年か後にはまた石棺を作らなければいけない。そういう困難な作業をずっとやり続けないといけなくなっ てしまいます。

R:仮に福島で石棺をつくったとしても、将来、それを覆うための第2、第3、あるいはそれ以上の石棺が必要になってくる、ということですね。

小出:恐らく、そうなってくるだろうと思います。そうさせないためには、熔け落ちた炉心というものを取り出す作業をやらなければいけないのですが、これには膨大な被曝作業が伴いますので、いつの時点で石棺を作るのかという判断を、いつか迫られることになると思います。

R:つまり、福島の現状は、廃炉はしないといけないけれども、廃炉に対する見通しは全く予測がつかないということですね。

小出:そうです。

 

「小出裕章さんに聞く 原発問題」まとめ

 

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