恵山郊外には野菜など作る自留地付きの一軒家が点在する。2014年5月13日、撮影アジアプレス

恵山郊外には野菜など作る自留地付きの一軒家が点在する。2014年5月13日、撮影アジアプレス

 

農村でも住宅売買

パク・チャヌは農村の住宅の現状について調べ次のように報告してきた。
「会寧市周辺の農村地域の場合、農村で一般的な庭を含め敷地70坪ほどの一戸建てならば2000万ウォン(2500米ドル程度)前後。アパートの相場も同 じぐらい。一方、交通が不便だったり、左官工事が雑だったりオンドル(床暖房)を備えていないなど追加の工事を要する家の場合、40~50坪の広さなら 800万ウォン程度で取引されている。先日、会寧市から遠く離れた農村に売り物があると聞いたので見てきたが、2世帯用の平屋に50坪ほどの自留地(個人 の収入にすることが認められた副業用の耕地)が付いていて、きれいな家が500万ウォンだった。都市部から離れた交通不便な地域であっても、市場の近くに あれば70坪ほどの家が1500万ウォン前後で取引されている」
※(1万ウォン=約1.25米ドル/2014年3月初旬の平壌におけるレート)

市場近くの住宅価格が高いことについて彼は、
「理由は簡単で、金儲けがしやすいから。自分で商売をしなくても、市場の商売人の荷物を保管するだけで謝礼をもらうことができる」
と説明した。なお、住宅は、朝鮮ウォン以外にも人民元や米ドルでも取引されているそうである。

複数の脱北者の証言によれば、市場周辺の住宅はさながら「流通倉庫」のようになっており、中には単に商人の荷物を預かるだけでなく、仲卸業者のような役割を果たしているケースさえあるという。

こうした住宅売買に対して、当局は取締りをやらないのだろうか?実態についてパクは次のように述べる。
「住宅取引では多額のお金がやり取りされるだけに、保安署(警察署)や保衛部(情報機関)が言いがかりをつけてくることも多い。しかしそれも、賄賂やコネ に頼ってもみ消すことができる。そもそも、そういった面倒を見てくれるコネなくして、住宅の建売のような商売に乗り出すのは難しい」

北朝鮮当局は近年、「馬息嶺スキー場」や「文殊プール施設」など、金正恩の功績作りのための大規模工事に力を注ぐ一方で、国民生活を向上させるため の住宅建設には無関心だ。それゆえに、金正恩時代に入っても、国民の住宅需要は強く、非公認の住宅市場はなくすことができないでいる。今や、中国国境近く の辺ぴな農村の住宅までも、売買の対象になっており、住宅市場を通じないと住むことできなくなっている。

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