運転中の原子力発電所における日本で初めての死亡事故となった関西電力・美浜原子力発電所の事故からちょうど10年が過ぎた。人災として関西電力の危機管 理能力が厳しく問われたこの事故は、果たしてその後の日本の原発運営にどのような教訓を残したのか。京都大学原子炉実験所・助教の小出裕章さんに聞いた。 (ラジオフォーラム)

京都大学原子炉実験所・助教の小出裕章さん
京都大学原子炉実験所・助教の小出裕章さん

◇140度の熱水が作業員を襲った

ラジオフォーラム(以下R):10年前の2004年8月9日、美浜原発で国内初となる稼働中の原発での死亡事故が起きました。簡単に言えば、核エネルギーの熱で沸かした熱湯が通る配管が破裂して、水蒸気と熱水を浴びた作業員が亡くなったという、そういう事故だと解釈していますが。

小出:基本的にはその通りですが、作業員が浴びた熱水は、ウランの核分裂によって沸騰した水そのものではなく、2次系といわれる、タービンを回した蒸気がまた水に戻って、それが蒸気発生機に送られる途中の配管が破れて、そこから噴出した熱水です。

R:当時、小出さんはこの事故を受けてリポートを作成されていますが、稼働中の原発で初めて死亡事故が起きたことを知ったとき、そして、その詳細が明らかになるにつれて、どのようにお感じになりましたか。

小出:まず、亡くなった5人の方がたは、いわゆる関西電力の社員ではなくて、そのひ孫請けの会社の方たちでし た。140度という高温の水が10気圧という圧力がかかった状態で配管の中にあったのですが、その配管に一気に大きく穴があきまして、高温の水と蒸気が音 速に近いような形で大量に吹き出してきたのです。

それを浴びて、あるいは吸い込んだりして、恐らく4人の方はほとんど一瞬のうちに絶命したと私は思います。残りの1人の方は、全身の9割に火傷を 負って重体になっていたのですが、その後、半月ほど苦しい戦いをした後で、やはりお亡くなりになってしまいました。まことに苦しい形で命を奪われたのだろ うなと、まずは感じました。

◇事故原因は安全対策費の削減

小出:そして、その原因が一体何なのかということをまずは知らなければいけないと思い、私自身も調査を始めたのですが、あまりにも馬鹿げたものでした。

もともとは、1センチもあるような分厚い配管だったわけです。けれども、壊れた時には、もうその配管が腐食と水による機械的な摩耗によって、わずか0.4ミリの厚さしかなかった。それに全く気づかず、検査もしないまま、何十年も経っていたという状態だったのです。

R:これは怠慢と杜撰な管理によって起きた人為事故というほかないですね。

小出:まさにそうですね。本当であれば、きちんとした検査体制をつくってやるべきなのですけれども、検査にお金がかかるということで、関西電力が検査の費用を次々と削減してきてしまっていました。そのために、きちっとした検査を行わないまま事故に突入してしまったのです。

R:この美浜の事故の教訓というのは、2011年の福島の事故まで活かされていたと言えるでしょうか。

小出:残念ながら活かされていなかったわけですね。検査というものも、どんどん手を抜く方向で行われてきました し、福島の場合には、本当だったら事故の時に使わなければいけないような装置があるのですけれども、そういう装置の点検も、また運転の訓練もしていなかっ たということが事故で明らかになりました。

ですから、「経験が活かされたか」という問いであれば、「残念ながら活かされなかった」ということになると思います。

2011年の福島の事故があまりにも甚大すぎて、この美浜原発事故を思い出す人は少ない。だが、美浜での教訓が生かされ、その後、日頃から装置の点 検や事故を想定した訓練がきちんと行われていたならば、福島での事故の影響を多少は軽減できていたかもしれない。教訓を活かせない電力会社の体質はもちろ んだが、それを見過ごしてきた私たち一人ひとりの意識の甘さも、今改めて問う必要がある。

 

「小出裕章さんに聞く 原発問題」まとめ

 

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