◆ 新規制基準の限界

R:メリットとデメリットは背中合わせというか、ある問題を解決しようとすると、次の問題が起きてしまうという のが原子力というものの難しさなのだと思います。にもかかわらず、原子炉が同じ型だという理由だけで、その審査を簡略化できないかというのは、ちょっとよ く分からない考え方ですね。

小出:全く分からないです。

R:加圧水型という建物の構造、原子力を生み出す構造は同じものなのでしょうが、それぞれの原発の建っている場 所、立地条件は異なります。海沿いにあるのか、海面から何メートル上にあるのか、どれぐらい活断層があるのか。そういう地震のリスクなども含めて審査をす るという話でしたよね。

小出:そうです。新規制基準では、「活断層をより厳密に審査しろ」ということや、「津波の影響がどれだけあるか を審査しろ」ということが求められているわけで、そういうものは全て敷地に依存しています。加圧水型という原子炉のかたちとは違う、そういう事柄をきちん と評価しなさいというのが新規制基準の目玉ですので、そんなもの簡略化できる道理がないのです。

ですが、敷地の条件などとは別に、立地している地域の住民の安全をどう守るかという、もっと重要な条件があります。しかし、原子力規制委員会はその ことについて「自分たちの責任ではない」と言ってしまっていますし、新規制基準で言えば、「それぞれの自治体で勝手に考えろ」ということになっています。

川内原子力発電所に関しても、原子力規制委員会は、「避難計画とかそんなことは一切知らない」と言ってしまっているわけです。でも、一番大切なのは、本当に住民の安全が守れるかということなのであって、その条件はそれこそ個別敷地に依存しているのです。

ですから、審査の簡略化というのは、ほんのごく一部でできる場所もあるかもしれませんが、ほとんどのものはできないと思った方がいいと思います。
基本的に原発は一基ずつオーダーメイドでつくられるので、同型だからといって、全て同じものだと言うことはできない。また、立地や稼動年数などあらゆる条 件が異なっていることを考慮すると、「同型であれば簡略化してもいい」という今回の発言は、安倍内閣の閣僚らが原発に対する必要最低限の知識すら持ちあわ せていないのではないかと、疑念を生じさせるのに十分なものと言えるだろう。

 

「小出裕章さんに聞く 原発問題」まとめ

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