「糧穀販売所」の看板がかけられた建物。部屋は空っぽで開店休業状態だ。2012年11月両江道で 撮影アジアプレス

「糧穀販売所」の看板がかけられた建物。部屋は空っぽで開店休業状態だ。2012年11月両江道で 撮影アジアプレス

 

専売制復活を強行 違反の米没収で住民反発

住民による自由な穀物取引を黙認してきた北朝鮮当局が、食糧の専売制を復活させようとしていることが北朝鮮内部での取材で分かった。北朝鮮の北部に 住む取材協力者が10月中旬に伝えてきた。市場での食糧の売買を禁じ、国営の「糧穀販売所」でのみ認めるもので、国家が食糧流通の主導権を住民から「奪 回」しようとする動きといえそうだ。(ペク・チャンリョン 石丸次郎)

この取材協力者によると、市場での食糧販売禁止の動きが始まったのは九月末のこと。彼の地元の糧政局の幹部が「党の指示だ」として、公設市場での食 糧の売買を禁じ、販売したい者には「糧穀販売所」に強制的に納入させている。また食糧が必要な人は、「糧穀販売所」でのみ購入するようになった。売買は、 いずれもこれまでの市場価格よりも少し安い値段が設定されているという。

住民に対しては、違反時には食糧を無条件に没収されることに同意する誓約書まで集めており、糧政局の役人だけではなく、検察や保安署(警察)の人員 まで動員して私的な穀物取引を厳重に取り締まっているという。強権を発動して、国による食糧専売制に踏み切ろうという動きだと言える。

真っ先に取り締まりの標的になっているのは、食糧を運搬する業者たちだ。当局は、地域(郡や市)の境界ごとに「食糧遮断所」と呼ばれる検問を設置、 糧政局の許可証が無い場合には無条件没収されるという。先月28日には、見せしめのためか、1トンほどの米を他地域から運んできた業者のトラックが摘発さ れ、全量を「糧穀販売所」に強制的に安値で納品させられる事件が起きたという。

当局の突然の強硬姿勢に、住民の不満は高まる一方だと、取材協力者は次のように話す。
「市場で食糧を売って生計を立てていた農場員(農民)たちは『自分で作った穀物も自由に売れなくなった』と反発している。また、貧しい住民は『市場ではお 金がない時でもツケでいつでも食糧が買えたのに、国営の『糧穀販売所』ではツケがきかないので困っている』と嘆いている」
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