福島第一原発事故直後の2011年5月、京都大学原子炉実験所・助教の小出裕章さんが参議院の行政監視委員会「原発事故と行政監視の在り方」に参考人とし て招かれ、発言した。原子力政策の限界と原子力ムラの欺瞞をよどみなく解き明かしたこの国会証言の内容を、当事者である小出裕章さんと改めて振り返る。(ラジオフォーラム)

ラジオフォーラムの収録で語る小出裕章さん

ラジオフォーラムの収録で語る小出裕章さん

◆ウランは貧弱な資源

ラジオフォーラム(以下R):2011年5月ですから、福島第一原子力発電所の事故の発生から2か月後ですね。 小出さんは国会に行かれて、国会議員の前で「もう原発を進めてはいけない」と証言をされました。Youtubeでも流れていますが、大変すばらしい証言で したので、その内容について振り返りたいと思います。

小出:はい。

R:証言の冒頭で、「石油や石炭は枯渇してしまう。それで私は原子力の世界に入ったが、調べてみたら原子力の燃料となるウランはもっと少ないことがわかった」と述べておられますが、ウランというのはそんなに少ないのですか。

小出:圧倒的に少ないです。発生できるエネルギーに換算すると、石油に比べて数分の1、石炭に比べれば数10分の1しかないという、まことに貧弱な資源なのです。

R:それに対して原子力ムラは、少ないけれどもこれをプルトニウムに変換して使うのだ、濃縮して加工して、高速増殖炉で再処理をしながらサイクルで使うのだと言いますが、小出さんは「でも、もんじゅ(高速増殖炉)が動いてないじゃないか」と反論していますね。

小出:そうです。地球上に存在しているウラン自身は大変貧弱な資源なので、原子力を推進しようとしてきた人たち は、そのウランの一部、燃えない、本当は役立たずのウランをプルトニウムに変えて利用する。そうすれば、原子力の資源量は60倍になるので、石炭と同じぐ らいの資源にはなると言ってきたのです。

ただ、それをやるためには、高速増殖炉という原子炉が必要で、日本ではもんじゅという実験用の小さな原子炉をとにかく動かしてみようとしたのです。 そのもんじゅという原子炉は、すでに1兆円ものお金をつぎ込んでみましたけれども、豆電球ひとつつけることができないという状態で今日まできています。

R:小出さんはさらに国会で次のようにおっしゃっていますね。つまり、1億円の詐欺事件を起こしたら、少なくと も1年間は刑務所に入らないといけない。そうすると、これは1兆円の詐欺なので、1万年の罪だと。もんじゅの責任者が仮に100人いるとすれば、1人あた り100年入ってもらわないといかんと。

小出:要するに、それほどお金を費やしたのに、できないということなのです

隠された原子力の危険性

R:格納容器は絶対に壊れない、原発事故は想定不適当だと言われてきたが、実際に福島で事故は起きたじゃないか と小出さんは電力会社のこれまでの主張を非難しています。さらに、実際に事故が起きた時の政府の対応も非常に不適切であるとし、防災というのは危険を大き く想定するのが鉄則なのに、政府は一貫して事故を過小評価したと発言しています。国会でのこれらの発言について詳しく教えてください。

小出:もともと、原子力発電所というものは巨大な危険を抱えているわけです。そういうものが事故を起こした場合 にどうするのかということを、あらかじめきちんと防災訓練などをして備えておかなければいけなかったわけです。ところが国と電力会社は、原子力発電所だけ は大きな事故を起こさないということにしてしまって、住民の避難訓練などもろくにやったことがなかったわけです。そして、事故が起きてしまえば、そんなこ とを想定もしていなかったがために情報がきちんと流れなかったのです。

例えば、政府の側では、オフサイトセンターというのをつくって、そこで政府として情報を集めるということにしていたのですけれども、オフサイトセンターにいた政府の職員は事故が起きた途端に逃げてしまったのです。

R:それは話になりませんね。

小出:住民を放ったらかしにしたまま逃げてしまいました。情報をきちんと把握することすらできない。そして、把握した情報にしても、例えば、当時は民主党政権だったわけですけれども、民主党の政権には情報を流さないというようなことを官僚たちがやったわけです。

R:あと、SPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)も隠しましたね。

小出:はい。事故が起きた時に、どちらの方向にどれだけの放射性物質が流れて、住民がどれだけ被ばくをするかと いうことをきちんと予測するのがSPEEDIというものの役割だったのです。当時、そのSPEEDIは実は動いていたのです。開発に100億円以上のお金 をかけて、たくさんの方々がそれに従事して仕事をしていて、事故が起きた時は、たぶん彼らは不眠不休で仕事をしていたと思います。ただし、その結果は住民 には知らされず、外務省を通じて米軍にだけ知らされたのでした。

◆「理念なき政治」「道徳なき商業」は原子力ムラそのもの

R:小出さんは国会証言の最後に、ガンジーの「7つの社会的罪」を挙げておられます。すなわち、「理念なき政治」、「労働なき富」、「道徳なき商業」などですが、このうち「道徳なき商業」とは、まさに原子力の世界を表していますよね。

小:まさに東京電力そのもののことだと私は思います。

R:4つ目は「人格なき学識」とあります。あの事故後に東京大学の教授などが出てきて、「メルトダウンしてない」とかおしゃってましたよね。

小出:はい。本当にいわゆる、科学技術というのが単に何か知識さえあればいいというふうにこれまで進んできてしまったわけですけれども、知識だけ集めて、人格もなければ知恵もないという状態で国家の中枢に多くの学者たちが集まってしまったのです。

R:そして、残念ながらこの安倍内閣になって、また再稼働ということで、本当に「道徳なき商業」「人格なき学識」がまだ続いているということですね。

小出:政治のことを言えば、「理念なき政治」と言うのですけれども、全く理念のないまま、ただただ安倍さんは経済最優先と言っているわけで、本当に恥ずかしい国だと思います。
小出さんが国会証言をしてから3年半、日本は脱原発から原発推進に舵を切りなおした。その音頭をとる自民党政権を、経済政策から多くの人が支持している。 小出さんの指摘したガンジーの「7つの社会的罪」は、すべての日本人にとって一つぐらいは当てはまるに違いない。小出さん自身もまた、自らを含めた原子力 の世界そのものを、「7つの社会的罪」の一つである「人間性なき科学」に当てはめている。

 

「小出裕章さんに聞く 原発問題」まとめ