日本で周期的に大地震が起こることは周知の事実だが、にもかかわらず原発を次々と生み出していった背景に、日本の原発安全神話があることは疑いない。福島 第一原発で事故が起きてからも、日本の原発は地震に強いという神話は崩れていない。その真偽を京都大学原子炉実験所・助教の小出裕章さんに聞いた。(ラジオフォーラム)

元京都大学原子炉実験所・助教の小出裕章さん

元京都大学原子炉実験所・助教の小出裕章さん

◆「地震説」信じる多くの事例

ラジオフォーラム(以下R):今日は原子力発電所と自然災害についてお伺いしたいと思います。福島第一原発の事 故は自然災害が直接原因となって起こりました。まず地震で揺れがありましたが、この揺れによって、そもそも原発は壊れたんじゃないかという「地震説」と、 地震の後に来た大津波のために壊れたのだという「津波説」があります。あれからもう4年近くが経つわけですけれども、小出さんは今どういう見方をされてい ますか?

小出:地震がまず初めに起きたのですね。それから1時間後に津波が襲ってきたわけで、津波というものが決定的なダメージを与えたということは本当だと私は思います。でも津波が来る前に、地震が起きたことですでに原子力発電所のあちこちが壊れていたという証拠はたくさんあります。

R:東京電力は「いや、地震の揺れには万全を期していたので、原発事故は想定外の大津波が来たせいだ」ということを今でも主張しているようですね。

小出:東京電力はそう主張していますが、事実はそうではありません。例えば、1号機という原子炉では津波が来る 前に、原子炉建屋の中の放射線量が上昇していました。津波でなく、地震の時からすでに異常が起きていたということの証拠だと思います。それから長い間、論 争になっているのですが、実は1号機の非常用発電機は津波が来る前に止まってしまっていたというデータもあります。きちんとこれから検証しなければいけま せんけれども、その可能性もあると思っています。

そして何より決定的な出来事があります。1号機の最上階5階と呼んでいる部分で水素爆発が起き、壁が吹き飛び、天井が落ちてしまいました。そして、 その5階の床には4階に大型機器を搬入するための穴が空いていて、そこに重たい鉄板が蓋をしていたのですが、実は閉めていたはずのその蓋が、吹き飛んでし まって、なくなっていたのです。それを説明しようとすると、4階で巨大な爆発が起きて、その鉄の蓋を吹き飛ばしたと考える以外にありません。

その4階には非常用の復水器という物がありまして、恐らく、その非常用復水器のところでなにがしかの配管等が壊れて、そこから水素が噴出し、それで大きな爆発が起きた。そして重たい鉄の蓋を吹き飛ばしたというストーリーを作る以外には説明がつかないのです。

つまり、津波の届かない4階に大量の水素が溜まり、爆発したことになります。それを説明するためには、非常用復水器の配管等が破れていたと想定する以外にありませんし、地震で壊れたと考えるのが一番妥当だと私は思います。

R:なるほど。もう津波が来る前の揺れで配管に異常が起こっていたのだ、ということですね。

小出:そうです。福島第一原子力発電所を破壊した地震のマグニチュードは、9という数字で表されました。では、 その地震が一体どれだけのエネルギーを放出したかと言うと、広島原爆が放出したエネルギーの3万発分に相当する。もう到底、人間技ではない。人間が対処で きるようなものではないということが、地震というかたちで表れてくるのです。そういう時には「もう打つ手がない」と、やはり覚悟しておかなければいけない と私は思います。

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