東京電力福島第一原発の事故処理において、当面の最大の問題とされている汚染水処理問題。その現状と今後の見通しについて、京都大学原子炉実験所OBの小出裕章さんに聞いた。(ラジオフォーラム

ラジオフォーラムの収録で語る小出裕章さん

ラジオフォーラムの収録で語る小出裕章さん

ラジオフォーラム(以下R):東日本大震災、あるいは福島第一原発事故から4年が経ちましたが、いまだ熔け落ちた核燃 料がどこにあるのか分からず、汚染水問題も難航しています。汚染水の浄化処理について、東京電力は当初、2014年度内に完了すると言っていましたが、そ の見通しを「5月中」に延期しました。現在、汚染水の状況はどうなっているのでしょうか。

小出:一言で説明するのは大変難しいのですけれども、要するに、どうしようもない状態になっています。

そもそもなぜ汚染水などというものが生じるのかといえば、熔け落ちた炉心が今どこに、どんな状態であるのかさえ分からないからです。事故後、この4 年間、何をやってきたかと言えば、「冷やす」ためにただひたすら水をかけ続けてきたのです。これ以上、炉心を熔かしてしまえば、大量の放射性物質が出てき てしまうからです。

どこに熔けた炉心があるのか分からないけれども、圧力容器の中に水をとにかく入れようということで、4年間ずっとやってきたわけです。そうなれば、 入れた水が放射能で汚れた汚染水になってしまうということは当たり前のことであって、入れれば入れるだけ汚染水が増えてしまうわけです。

途中から、ただ外からかけるだけではダメだろうということで、循環冷却という形でグルグル回せばいいのではと、東京電力も国も考えました。けれども 残念なことに、福島第一原子力発電所は2011年3月11日に巨大な地震に襲われてしまったわけで、原子炉建屋をはじめ、いろいろなところにヒビが入って いるのです。割れてしまっていて、外部から地下水がどんどん建屋の中に流れて込んできてしまうのです。

そうなると、その外部から流れてきた地下水が、放射能の汚染水と渾然一体となってしまって、どんどんその量が増えてゆきます。ついこの間までは、地 下水の流入によって、放射能汚染水が毎日400トンずつ増え続けてしまうということになっていました。東京電力は福島第一原子力発電所の敷地の中に、汚染 水を溜めるタンクというのをどんどん造ってきたのですけれども、もう既に50万トンを超える汚染水が溜まってしまっているのです。

このままではいけないということで、上流から流れ込んでくる地下水を途中で汲み上げて、原子炉建屋の方に行かないようにしようということを―バイパ スと言っているのですけれども―やり始めました。しかしながら、そんなことで減らせた量はほんのわずかで、未だに毎日350トンもの汚染水が増え続けると いう状況になっています。

R:地下水の流入を止めるための凍土壁という話もありましたが、結局難航してまだ実現していませんね。

小出:そうです。私は、もともとできないと思っています。凍土壁というのは、例えばトンネルなんかを掘ろうとすると、 地下水が工事現場に噴出してきたりするわけですね。そういう時に、噴出してきたその現場をとにかく凍らせて、水が噴き出してこないようにしようという技術 で、かなり長い期間、実績があるのです。

ただし今回の場合には、深さ30メートル、長さにすると1.4キロメートルもの壁を造らなければいけません。そんなことはやったことがないわけで す。凍らせるためにはずっと冷媒というのを流し続けなければなりません。そのためには冷凍機が動かなければいけない、ポンプが回らなければいけない、いつ いかなる時も停電してはいけないということになるわけです。そんなことを何年、何十年と維持できるわけがないわけで、必ずこれは破綻します。

R:なるほど。そうすると、蛇口を閉められないまま水は出続けており、バケツに溜まったものをタンクにかき出し続けて50万トンという状態なのですね。

小出:はい。

R:これが高濃度汚染水なので、なんとかそこから今度は高濃度の核物質を取り除くために、多核種除去設備(ALPS)を導入したわけですが、これも結局、フル稼働は難しい状態が長い間、続いていますよね。

小出:そうなのです。それにも根本的な理由があるのです。福島第一原子力発電所の敷地の中は、もう放射能の沼の ような状態になってしまっていて、そこに入れば、みんな被曝をしてしまう。労働者が作業をしようとすれば、どんどん被曝量が増えてしまうのです。アルプス にしても、きちんと運転できるようにするには、まずは装置を造らなければいけないわけですが、きちんと装置を造ろうとすればするほど、労働者は被曝してし まう。

ですから、なんとか簡易的に装置を組み上げたいと思うわけですし、そうせざるを得ないわけです。そのような状況の中で装置を組み立てていますので、 あちこちでまた壊れてしまう。タンクとタンクの間を結んでいる配管もきちんとした配管ではなくて、ホース等で繋いでいますので、簡単にまた漏れてしまうと いうようなことになる。本当に苦しい状況の中で作業をしているのですが、そうであるが故にきちんと動かないという状況になっているのです。

R:なるほど。そういうことでこの間も死亡事故が起きましたし、14年度内と言っていた汚染水処理を5月に延期することになったのですね。5月中には実現するのでしょうか。

小出:私は断言しますけれども、できません。もともと年度内なんてできる道理もなかったのです。ただ安倍さんが オリンピックを誘致したいがために、アンダーコントロールと言ったわけで、それのツケと言うか、なんとか少しでもやれと言われて東電が年度内と言ったわけ ですけれども、もともとできないことを言っているわけですし、5月と言ってもそんなもの到底できません。

R:根本的にコントロールできないものを相手にしている、その上でいろいろなことを試しているわけですから。弥縫策にはやはり限度があって、コントロールしきれない状態が続いているということですね。

小出:そうです。

小出裕章さんに聞く 原発問題