平壌の大城山区域の露天食堂。外国人の訪問があると立ち退かされる。 2011年7月 撮影ク・グァンホ(アジアプレス)

平壌の大城山区域の露天食堂。外国人の訪問があると立ち退かされる。 2011年7月 撮影ク・グァンホ(アジアプレス)

 

北朝鮮ではこの10数年来、中国との貿易業務に携わる者、国内で商売を手広く展開している者などを中心に、権力機関の周辺には莫大な外貨を蓄える新興富裕層が続々登場している。彼らは、外国並みのサービスや便利さ、贅沢を求め、そのために外貨を使うことを厭わない。

北朝鮮当局は、電子決済システムによって各サービス提供組織が不正を行えないように管理して、これまで市場に流れていた外貨を国家が吸収し、また外国人訪問客に電子決済という「現代化イメージ」を持たせるために「ナレカード」を導入したものと思われる。

北朝鮮はすでに国家経済の破綻で、朝鮮ウォンの交換価値を決める主導権を市場経済に奪われて久しい。例えば2010年5月の「実勢為替レート」は、1米ドル=約900ウォンだった(アジアプレス調べ)が、今年5月時点のそれは1米ドル=8200~9000ウォン程だ。つまりこの5年間で朝鮮ウォンの市場の評価は10分の1に下落してしまったわけだ。

ところが、北朝鮮当局が唱える「国定為替レート」は5年間ほぼ横ばいである。北朝鮮政府は自国通貨を防衛する力を喪失しているにもかかわらず、形式的な「国定為替レート」維持しているわけだ。だがそれも、主に平壌中枢のごく限られた地域と、外国人が利用するごく限られたサービス提供事業においてのみ、独善的に運営しているに過ぎないのである。付言すると、貿易決済でこの「バーチャルレート」がまったく通用しないのは言うまでもない。

一点注目すべき事象がある。2013年に入って以降、「実勢為替レート」の下落に歯止めがかかっているのだ(アジアプレス調べ)。国内の外貨保有が増えたためなのか、その他の理由によるものかはっきりしたことはわからない。引き続き調査して報告したい。

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