戦後70年の節目の年、安全保障関連法案が国会で審議されている。抑止力となるのか、それとも戦争に巻き込まれるのか。戦争が起きればどうなるのか。元海 軍兵の瀧本邦慶さん(94歳・大阪市東淀川区在住)は整備兵として航空母艦「飛龍」に乗り込み、真珠湾攻撃や、翌42年6月のミッドウェー海戦に参加し た。その経験から「戦争を美化する話には騙されないように」とも訴える。(矢野 宏/新聞うずみ火)

元海軍兵の瀧本邦慶さんは90歳を超える高齢にも関わらず、小中高校などへ出向き、自身の戦争体験を語り、命の大切さ訴えている。(8月8日大阪市内で撮影・矢野 宏/新聞うずみ火)

元海軍兵の瀧本邦慶さんは90歳を超える高齢にも関わらず、小中高校などへ出向き、自身の戦争体験を語り、命の大切さ訴えている。(8月8日大阪市内で撮影・矢野 宏/新聞うずみ火)

◆沈黙は国を滅ぼす
17歳で海軍に志願した瀧本さんが反戦・平和活動をやっている。いつごろから変わったのか。「それはトラック島にいた時です」と瀧本さんは静かに振り返る。

「骨と皮になって仲間たちが死んでいく。どちらを見ても『絶望』があるだけ。そのときになって私は思いました。南洋の小さな島で骨と皮に痩せ、野垂 れ死んでヤシの肥やしになる。それがなんで国のためなんや、と。こんなバカな話はない。いくら戦争といっても、こんな死に方は納得できないと思ったので す」

現在、瀧本さんは90歳を超える高齢にも関わらず、小中高校を中心に自身の戦争体験を語っている。児童・生徒たちに言うことは「お父さん、お母さん からもらった命を大事にしなさい」ということ。「幸せな生活を送るのも、命があっての話でしょう。だから、かけがえのない命を大事にしてくれと言うので す」

さらに、「国は残念ながら、いざとなったら国民の命は守ってくれません。国はあてになりませんよ」とも訴える。
「陸上自衛隊の幕僚長が『自衛隊の目的は国民の命を守るためにあるのではない。自衛隊は国を守るためにある』と言ったのを聞きました。おかしいじゃないで すか。基本的人権を持った国民あっての国でしょう。国民の命を守らないというふざけたことがありますか。いざとなったら国をあてにしていてはダメ。自分の 命は自分で守る」

それゆえ、安保法案について強い危機感を持つ。

「いったん戦争に向かう法律ができたらどうしようもなくなるでしょう。戦争になったら、たとえ親であっても子どもの命を守れませんよ。生木を裂かれ るように引き離され、子どもは戦地へ行かされる。それが戦争なのです。そのための法律を政府はつくろうとしている。大きな声を上げるのは今なのです。法律 が決まってからでは何にもなりません」

瀧本さんは語気を強めてこうも訴える。

「沈黙は国を滅ぼしますよ。『私は反対している』と、腹の中や頭の中でいくら思っていても口に出さないと人にはわかりません。『反対は反対』と、 はっきり声を出さないといけません。みんなが遠慮して声を出さないから、今のような政府ができるのと違いますか。今の政府を誰が作ったのか。選挙の結果で すから、みんながつくったことになるでしょう。ですから、選挙はよっぽど考えないといけない。反国民的な政策をやったら、我々が主権者なのですから『頭か ら湯気を出して本気で怒れ』と言っています」

さらに、「きれいな話」には騙されないようにとも呼びかける。

「国を背負う若者が死ぬのがわかっていて、なぜ、戦争が起こるのか。若者の命と引き換えに儲けるやつがいる。笑いが止まらないやつがいるからでしょ う。それが誰か、よく考えてみてください。いざ、戦争になったら、戦争を決める連中や命令を下す連中は絶対に最前線には行きません。安全なところにおりま す。これも知っておいてください」(了)【新聞うずみ火/矢野宏】

<<<安保法制>戦争体験者は語る(2)へ

★新着記事