延辺での抗日闘争で亡くなった人を振り返る展示に見入る延吉市民。8月15日、撮影石丸次郎(アジアプレス)

延辺での抗日闘争で亡くなった人を振り返る展示に見入る延吉市民。8月15日、撮影石丸次郎(アジアプレス)

 

北朝鮮に対する延辺の人たちの感情悪化は、政権の振る舞いに因るところも大きい。2013年2月に金正恩政権が核実験を強行した時は、延辺地区で地震が感 知されて、大いに住民を不安がらせた。その年12月に張成沢(チャン・ソンテク)氏を無慈悲に粛清・処刑したことで、朝鮮族の間で「金正恩氏は若い暴君」 というイメージが決定的になった。

筆者が延辺を訪れる直前、南北朝鮮の軍事境界線で地雷爆発事件が発生、金正恩政権は8月20日、前線に「準戦時状態」を宣布し緊張が走った。

かつて南北朝鮮の諍いが起こると、朝鮮族の間には北朝鮮に同情的な声が少なからず上がったものだが、この時はまったく聞くことがなかった。
「金正恩はならず者か」
「北がまた面倒を起こした」
と辛辣な声ばかりだ。

朝中の国家間の関係は悪化したままだが、延辺の朝鮮族の、北の母国に対する気持ちも、年々離れて行くばかりである。

本稿は毎日新聞大阪版の連載「漆黒を照らす」9月15日付記事に加筆修正したものです。

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