◆核拡散に積極的な日本
R:商売繁盛のためにはなりふりを構わない原子力ムラの姿勢がよくわかるのですが、では、日本はなぜインドに対して再処理を認める方針なのでしょうか。

小出:インドは、カナダから輸入した原子炉を動かしてプルトニウムを作り、それを取り出すための独自の再処理技 術をつくって、実際にプルトニウムを取り出したのです。ですから日本が認めるとか認めないとか言う前に、インド自身は再処理という力を持っているのです。 つまり、インドと原子力協定を結ぼうとする限りは、もうインドが再処理技術を持っているということは前提にするしかなく、原子力発電所を輸出してしまえ ば、核兵器を造れてしまうということが初めから分ってしまっているということです。

ですから、もし核不拡散ということを重視するのであれば、再処理能力を持っている国に原子力発電所を売ること自体が、とんでもないことになってしま うわけです。けれども、インドという国はいい国だから特別に認めると。かつて核兵器を造って爆発させたこともあるけれども、もう今はいい国なのだからとい うようなことで、米国はインドと原子力協定を結んだわけです。日本もその尻馬に乗って、インドは再処理技術を持っているけれども、インドだけは原子力発電 所を輸出してもいいということにしてしまっているわけです。

R:これでは、日本が掲げている原子力の平和利用という原則が破られてしまうことになりませんか。

小出:もちろん破られるわけです。インド自身は核不拡散条約(NPT)にも加盟していません。そういうところに原子力発電所を売りつけるわけですから、核拡散を認めてしまうということは、初めからわかっています。

ですから、何か日本は原子力平和利用とか、自分自身は核兵器を持たず造らず持ち込ませずというようなことを言っているわけですけれども、実際には積極的に核の拡散に加担していくということになるわけです。

ただし、私自身は、インドという国が核兵器を造った、あるいは、これから造ろうとしていることよりも、もっと大きな問題が存在していると思います。

もちろん核兵器なんて持つことは本来的に悪いことだし、そんなことは私はやってほしくありません。けれども、いわゆる国連常任理事国の米・露・英・ 仏・中の5か国だけが核兵器を持ってよくて、他の国は絶対に持ってはいけないという核不拡散条約そのもの自体が圧倒的な不平等条約だと私は思っています。 インドは持ってはいけない、あるいはその他の国も持ってはいけないという、そういうまず不平等な状態を解消に向けて動くということの方が大切なことだと思 います。

R:今、安倍総理をはじめとする日本政府は、インドだけでなくトルコですとかベトナムにも原発輸出に積極的になっていますけれども、核軍縮に対する考え方というのはあまりないのでしょうか。

小出:安倍さんには、根本的な政治理念がありません。あるとすれば、ひたすら米国の属国として、米国のご機嫌を うかがって、自分も経済的に発展していく、あるいは儲けをすればいいという、そのぐらいの気持ちしかありません。米国がインドに原子力発電所を売りつける ということを決めたのであれば、日本も原子力協定を結んで、米国と一緒になってインドに原発を輸出すると。そのことしか、もう彼の頭にはないのです。それ が彼の言う「経済最優先」ということです。

※小出さんの音声をラジオフォーラムでお聞きになれます。

「小出裕章さんに聞く 原発問題」まとめ