年老いた農民の女性が、収穫後の枯れたトウモロコシ畑で、取り残しを集めて回っている。2008年9月 黄海北道沙里院(サリウォン)市近郊の農村。沈義川(シム・ウィチョン)撮影

年老いた農民の女性が、収穫後の枯れたトウモロコシ畑で、取り残しを集めて回っている。2008年9月 黄海北道沙里院(サリウォン)市近郊の農村。沈義川(シム・ウィチョン)撮影

 

北朝鮮政権は、従来、協同農場からの生産物と輸入や国際支援など海外から導入されたもの、そして軍隊の畑(副業地)の生産物で軍糧米を調達して来た。しか し、90年代の大社会混乱期以降、約100万人に及ぶ朝鮮人民軍への軍糧米調達は厳しくなった。そのため北朝鮮政権は、都市住民に対して強制的な軍糧米の 調達を始めた。

2011年冬にアジアプレスのキム・ドンチョル記者が撮影した内部映像を見ると、市場管理員が、市場で商売をしている一人一人に対し、直接コメやトウモロコシを納付させていた。納められない者を恫喝する様子も見える。

当局は、農村に出向いてコメやトウモロコシ、果物などを仕入れ、市場の小売人に卸売りをする「テゴリクン」と呼ばれる零細商人に対しても軍糧米を徴発していた。都市貧民である「デコリクン」たちは「俺たちに飢え死にしろとでもいうのか?」と嘆息した。

北朝鮮当局は、「愛国米」「軍糧米」の名目で、都市住民から露骨に食糧を収奪していたのだった。
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