昨年11月、高速増殖炉もんじゅの運営主体である日本原子力研究開発機構に代わって、別の運営主体を半年をめどに見つけるよう政府より勧告が出された。これは、日本の原子力政策の中心にあるはずの核燃料サイクルが、根本から見直しを迫られている状況にあることを意味する。原子力の中枢ともいうべき核燃料サイクルについて、元京都大学原子炉実験所・助教の小出裕章さんに聞いた。(ラジオフォーラム)

京都大学原子炉実験所・助教の小出裕章さん

京都大学原子炉実験所・助教の小出裕章さん

ラジオフォーラム(以下R):原発依存度を減らしていくというのであれば、核燃料サイクルは必要ないということにならないのでしょうか。

小出:はい、おっしゃる通りです。核燃料サイクルというのは、原子力発電所で燃え尽きた使用済み燃料の中から、長崎原爆の材料になったプルトニウムという物質を取り出して、それをもう一度原子炉で燃やすというものです。そういう循環を核燃料サイクルと私たちは呼んできました。

でも、脱原発、つまりもう原子力をやらない、原子炉を動かさないというのであれば、そんなプルトニウムを取り出したところで使い道もないわけですから、全く意味のない作業だと思います。というよりは、むしろ原爆材料になってしまうようなプルトニウムという物質を、使い道のないまま取り出してしまうということは、むしろ世界の安全にとって大変な脅威になるわけです。

すでに日本は、使用済み燃料をイギリスとフランスの再処理工場に送りまして、プルトニウムを分離してもらってきたのです。その量はおよそ47~48トンになっています。それで長崎型の原爆をつくろうとすれば、4000発もつくれてしまうというほどのプルトニウムをすでにもう持ってしまっているのです。

でも世界から見れば、この日本は71年前まではアジアを侵略して大変な犠牲を生んだ張本人の国なわけです。そういう国が原爆4000発分ものプルトニウムをすでにもう持っているということ自体が脅威なわけで、日本は、使い道のないプルトニウムは保有しないという国際公約をすでにさせられているのです。

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