停電で止まったトロリーバス。車内には運転手と車掌の姿だけが見える。(2013年3月平城(ピョンソン)市 ペク・ヒャン撮影)】

停電で止まったトロリーバス。車内には運転手と車掌の姿だけが見える。(2013年3月平城(ピョンソン)市 ペク・ヒャン撮影)】

ここまで見てきたように、北朝鮮の社会主義式の公共交通は、鉄道もバスもほとんど「二重料金」が当たり前になってしまっている。その大きな原因は、鉄道員や運転手などに90年代半ば以降、まったくと言っていいほど食糧配給が出ていないことにある。

鉄道員には1~3000ウォンほどの月給が支給されているが、これでは市場で白米一キロも買えない。交通機関の労働者たちは、利用者から「別料金」を取るか、荷物を配送する副業をしないと生活できないのだ。

そのために、「二重料金」がすっかり定着してしまっている。とくに鉄道では、「個人の判断ではなく組織的に『実勢運賃』が設定され、組織内で分配ルールを決めている」(清津市の鉄道労働者)という。

例外は、首都・平壌の地下鉄ぐらいだと考えられる。料金は一律10ウォンで、これは日本円で0.125円相当。この運賃では、とても運行コストを賄えるはずがなく、他の財政からの補填なくして経営は成り立たない。

北朝鮮の社会主義式公共交通運営は、労働者の衣食住の配給が滞りなく実施され、国家が運行に必要なエネルギーを供給するという条件が満たされて、はじめて成立するものなのである。

平壌の場合、通勤・通学の足を国家が保障しないと、多くの職場、官公庁、学校が運営できなくなり首都機能が麻痺してしまう。また「ショーウィンドウ都市」としての役割も政権にとっては極めて重要なため、無理な財政補填で運行を維持しているのだ。

国営交通機関は、今や「人民の足」としての役割を果たせなくなっている。それになり替わって急成長したのが、次に紹介する商業的な交通網である。(続きを見る 3 >>

※当記事は、『北朝鮮内部からの通信リムジンガン」第7号』に掲載されています。

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