大阪市の城北朝鮮初級学校。大阪府の補助金カットで教師や保護者は負担を強いられるようになった。(写真:矢野宏/新聞うずみ火)

大阪市の城北朝鮮初級学校。大阪府の補助金カットで教師や保護者は負担を強いられるようになった。(写真:矢野宏/新聞うずみ火)

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◆補助金カットで、教職員への給料遅配や、保護者の負担も増

「やった! カレーや」「おかわりしていいの」――。6月、大阪市旭区新森の城北朝鮮初級学校をたずねた。「城北ハッキョを支える会」による給食作りでは、会長の大村淳さんらメンバー16人が朝から学校の調理室でご飯を炊き、カレーとサラダを手際よく作っていく。

「子どもたちの学校生活の様子を知ることのできる良い機会ですから一人でも多くの参加を呼びかけています」。その趣旨を説明する大村さんだが、もう一つの目的があるという。

「大阪府からの補助金がカットされ、学校側も大変です。朝鮮学校への進学を諦める家庭も少なくありません。1学期に1回の給食作りですが、毎日お弁当作りに追われるオモニたち、先生方の負担を少しでも軽くできれば」

府からの補助金がカットされて5年。少子化などで授業料収入も減り、教職員への給料遅配や、保護者の負担も増えたという。

「行政が率先する『弾圧』ではないか」と、大村さんは憤りを隠さない。「朝鮮学校に通っている子供たちは日本で生まれ、これからも日本社会で生きていく。朝鮮人とのアイデンティティを持つことは国際的な視野を持つこと。同化ではなく、違いを認めて生きる社会をなぜ目指すことができないのか」

戦後、日本の植民地支配によって奪われた言葉や文化、歴史などを取り戻そうと、全国各地に設立された朝鮮学校への弾圧は、1949年の学校閉鎖令に始まり、65年には「朝鮮学校を各種学校としても認可すべきでない」という文部事務次官通達が出された。 だが、当時の知事たちは朝鮮学校を認可し、70年には東京都が、74年には大阪府が補助金の交付を始め、90年代後半までに朝鮮学校が所在する29都道府県のすべてで補助が実施されるようになった。

大阪府は、2009年度には1億2099万円を交付、市からも2700万円が支出されていた。市内の朝鮮初・中級学校の児童・生徒1人当たりの補助額は、公立小・中学校の10分の1、私立の小・中学校の3分の1だったが、それでも、ようやく認められた「民族教育の権利」だった。

ところが、当時の橋下徹知事は「不法国家の北朝鮮と結びつく朝鮮総連に学校が関係しているなら税金は入れられない」と見直しを指示。

11年以降の補助金交付を取りやめた。今年3月には文部科学省が朝鮮学校に交付している補助金見直しを迫る通知を各自治体へ出したこともあり、補助金カットの動きが広がっている。

その背景には、拉致被害者家族会・救う会が朝鮮学校への補助金に強く反対していることがあるという。

家族会元事務局長の蓮池透さんは「朝鮮学校の子どもたちには何の責任もない。在日の人たちも拉致問題とは関係ない。そんな人たちに圧力をかけても意味がない」と語った。(矢野宏/新聞うずみ火)

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