沖縄県東高江の米軍ヘリパッド建設に反対する市民たちは、少しでも工事を遅らせようと、体を張った抗議行動を繰り返している。(2016年8月撮影:新聞うずみ火/栗原佳子)

沖縄県東高江の米軍ヘリパッド建設に反対する市民たちは、少しでも工事を遅らせようと、体を張った抗議行動を繰り返している。(2016年8月撮影:新聞うずみ火/栗原佳子)


◆ヘリパッド建設問題をめぐる経緯

2年間中断していた沖縄県東村高江の米軍ヘリパッド(ヘリコプター着陸帯)建設。7月下旬、国は工事に着手した。高江のある沖縄本島北部では何が行われてきたのか。8月上旬、現地を取材した。(新聞うずみ火/栗原佳子)

高江がある沖縄本島北部の「やんばる(山原)」は、亜熱帯の豊かな森が広がり、ここにだけ生息する固有種も少なくない。しかし、やんばるには7800ヘクタールの米軍北部訓練場があり、オスプレイによる低空飛行訓練とジャングル戦闘訓練が日常的に行われている。

1995年の少女暴行事件をきっかけに、沖縄県内で基地の整理縮小を求める声が高まった。翌96年、日米両政府は「沖縄に関する特別行動委員会(SACO)」の最終報告で、北部訓練場の北半分約4000ヘクタールの返還に合意。しかし、それは人口約150人の高江集落を取り囲むような6カ所の(N地区二つ、N4地区二つとG区、H地区)のヘリパッド建設と、海からの上陸訓練のための水域提供が交換条件だった。米軍普天間基地返還に代替基地建設が条件付けられた構図と同じである。

高江は地区の最高意思決定機関である住民総会で2度、建設反対を決議した。しかし国は2007年7月、建設工事を強行。一昨年までにN1地区の2カ所が完成、昨年2月には先行して米軍に提供された。当初は、北部訓練場の過半が返還された後、米軍に引き渡すという方針だったが、あっさり覆された。

住民たちは07年の工事強行時から9年間、座り込みを続けてきた。国は、現場に行ったことすらない7歳の少女を含む住民15人に対し通行妨害禁止の仮処分を申し立てたり、「住民の会」代表2人を提訴したりと「圧力」をかけてきたが、結局、09年度中に6カ所全て完成させるという当初の計画は頓挫。N4以外の4カ所は未着工だった。

米軍の在沖駐留米軍トップ、ニコルソン四軍調整官は6月18日に「北部訓練場の一部を来年初めに返還する用意がある」と発言。7月31日には「ヘリコプター着陸帯を建設することで4000ヘクタールの土地返還が可能になった。沖縄返還以来、最大の土地返還となる」という声明を出している。菅官房長官も「基地負担軽減のため着実に実行する」と呼応した。

高江の支援行動を続けてきた平和市民連絡会の北上田毅さんは「来年2月までに残り4カ所を作ることは至上命令。政府・防衛省はそのために、ありとあらゆる卑劣な不法行為を行っているのです」と憤る。

その「着実な実行」のために動員されたのが機動隊だ。県警約500人に加え、東京、大阪、千葉、神奈川、愛知、福岡の6都府県から約500人が「応援」に入り、警視庁機動隊が辺野古に派遣された時と同様、名護市のリゾートホテルに滞在しながら、市民を過剰に規制している。

高江に詰める弁護団の一人、小口幸人弁護士は「アメリカとの約束を守るために、これだけのことをする。今まで、まがりなりにも取り繕っていた建前も取り繕わず、N1もGもHも一気にやってしまえと。乱暴で雑。まさに権力が暴走している」と憤る。工事現場周辺で警戒に当たる防衛局職員の中には、元海兵隊員による女性殺人事件を受け、防犯パトロール要員として沖縄に派遣した70人も含まれている。「防犯パトロールだといいながら、やっている業務は高江で私たちを監視することだけ。事件の再発防止策すら、高江の工事のために悪用している」と小口弁護士。
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