近くの畑から盗んだトウモロコシを焼く兵士たち。痩せている。2008年9月撮影チャン・ジョンギル(アジアプレス)

 

兵員不足が深刻な朝鮮人民軍で、仮病を使っての入隊忌避や部隊離脱が相次ぎ、当局が強硬措置に出ていることが分かった。アジアプレスの北朝鮮国内の取材パートナーが軍関係者に取材した。

1月中旬、北部地域に住む取材パートナーは「軍事動員部」の指導員に会って、兵員の補充の状況を調べた。「軍事動員部」とは、人民武力省の隊列補充局傘下の兵役事務を扱う部署だ。

「会った『軍事動員部』の指導員によると、現在、軍隊を除隊する者に対して新規の入隊者が86%程にしかならないそうだ。新兵の絶対数がまったく足りないため、身体検査でよほどの問題がなければすべて入隊させよと、上から指示が下りてきたという。それで、『軍事動員部』では、今春の新兵募集のために早くも学校を回って身体検査を始めている。というのは、入隊時期が近づくと、親がやたらと病気やなんかの口実を作って、何とか子供を軍隊に送らないように画策するので、先手を打って身体を調べてしまおうという魂胆だ」このように取材協力者は伝えた。

さて、そもそも朝鮮人民軍の兵員不足の根本原因は何か? それは1990年代半ばの深刻な社会混乱と飢餓である。まず乳幼児も含めた子供がこの時期に大量に餓死した。餓死を免れても栄養不良で極端に体が小さい人が多い。さらに生活苦の中で子供を産まない傾向が進んで少子化に拍車化がかかった。この「飢餓世代」が今、 年代的に朝鮮人民軍将兵の大部分を占めるようになった。これが、現在の兵員不足の最大の要因である。兵力不足は部隊編成に支障が出るほどだという。

金正恩政権は、なんとか兵員数を維持しようと、2013年から、男子の入隊の最低身長基準を、145センチから142センチに下げたといわれる。2014年には、軍服務期間を1年延長して男子11年、女子7年にしている。
※昨年末から軍服務期間に変化があるという未確認情報もある。
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