「それでも親ですか!」といきなり詰問調ではじまり、園が禁じている清涼飲料水を園外で飲ませたと責めたてている。さらに唐突に「韓国人とかは、整形したり、そんなものをのんだりしますが、日本人はさせません。根っこが腐ることを幼稚園では教えてません」

Aさんは在日韓国人(現在は日本国籍)だ。努めて冷静に返信の手紙を書いた。清涼飲料水をめぐる批判に反論、「ここからが本題です」と前置きし、思いのたけをつづった。

「副園長のお手紙に『韓国人とかは整形したり、そんなものを飲んだりしますが』と書かれていましたが、はい、私自身韓国人です。両親共に韓国人のもと、育ってまいりました。この手紙を読んで私は言葉を失いました。数分固まってしまいました。私が中学生の時、韓国人だといじめにあったことを思い出しました」
「数名の身内、そして主人に手紙の内容を伝えました。みな揃って「差別だ!」と言っています。差別するつもりで書いていないのなら、『韓国の方なら』とか、違った言い方があるんじゃないですか?」
「昨夜はいろいろと考えさせられることがあり、眠れない夜になりました。精神的に参っています。今朝、子供たちの顔を見て、幼稚園に行く姿を見て、涙が出ました。子供はこんなにも純粋な目をキラキラさせているのに、私たち大人は何をしているのかと」

副園長からAさんに届いた返信は、さらにAさんの心を深くえぐる内容だった。

2、3日後、副園長から届いた返信は、さらにAさんの胸をえぐった。
「私は差別をしていません。公平に子供さんを預かっています。しかしながら心中、韓国人と中国人は嫌いです。お母さんも日本に嫁がれたのなら日本精神を継承なされるべきです」「勝手なこといいなさんな! 腹が立って仕方がありません」

Aさんは副園長と直接話したいと園に電話したが取り次いでもらえず、直接訪ねると、職員に門外へと押し戻された。

「門の外は車道です。子供たちを連れていたので、中に入れてくださいと言いましたが、それすら許してくれませんでした。子供たちを預かる幼稚園なのに」

退園を選ばざるをえなかったAさん。その後、同じように退園を余儀なくされたり、強制的に辞めさせられたりした元保護者らに出会うことになる。

副園長からBさんに送られた手紙。この後、Bさんは一方的な退園通告を受ける

◆一方的な退園通告も

Aさんが塚本幼稚園を選んだのは「自宅から近く、スクールバスも給食もある」からだった。元保護者らにほぼ共通する理由だ。独特な「愛国教育」に積極的に共鳴してここを選択した人はむしろ少数派のようだ。

Bさんは、「学校法人であることや礼儀をしっかり教えてくれること」に期待を寄せたという。園のパンフレットに記載された授業やクラブ活動、体験学習など多彩な内容も魅力だった。しかし、入園すると、パンフレットと実際とは大きな開きがあった。「看板に偽りあり」といえば、2 クラス編成だった学年が1クラスに「統合」され、教員1人が園児約50人を担当していることもあった。保護者にはなんの説明もなかったという。

Bさんも副園長からの手紙を受け取った一人である。きっかけはPTA会費の決算書だった。
「予算額と決算額がまったく同じでおかしいと思いました。よく見ると、教員の研修代や園児の内科検診費など、本来なら園の運営費から支払うべき金額がPTA会費から支払われていました。園に説明を求めましたが、納得いく説明がなかったので『来年はPTAに入会しません』と書いて手紙を出したら、園長から電話があり、『どういうことや。PTAに入るのが在園の条件やと規約にも書いている』と言われました。府の私学課に相談したら、翌日、副園長直筆の手紙が届けられたのです」

便箋に毛筆で書かれた手紙は、「いいかげんにしろ!」で始まっている。「すなおになれ!」と書いた後、これが言いたかったのか「大阪府庁にTELしたらあかん」という言葉で結ばれていた。

「まったく意味不明な内容で、船酔いしそうな文章でした」

Bさんが無視していたら、2、3日後、副園長から電話があり、「今月末でやめてもらいます」と、一方的に告げられた。
(続く)

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