日本会議が教育に力を入れる理由について、上杉さんは「右翼の人材不足」を挙げる。

「私学の中高一貫教育を通じ、右翼人材を純粋培養してきた。日本会議も年寄りばかりで、旧憲法のように改憲しても実践する若い実働部隊がいないわけです。戦前、教育が軍隊を支えてきたように、改憲後の社会の担い手は教育でしかつくれない。教育勅語は『いざ事が起きた時は国のため、天皇のために命を投げ出しなさい』と教え、軍国主義を支えました。日本会議系の教育は、天皇と国家に命をささげる皇国臣民になれというものです。そんな教育を支持し、持ち上げたのが安倍首相夫妻であり、日本会議の面々です」

森友問題で露呈した「戦前回帰教育」の流れを止めるにはどうしたらいいのか。上杉さんは、「安倍―松井体制は大きいように見えるが、急ごしらえの勢力で、いわばカルト集団。その感覚のずれを批判することが大事です。日本会議とは何かに気づき、把握することが出発点だと思います」と話す。

来年度から小学校で道徳が正式な教科となるが、3月24日に検定結果が発表された。「子どもたちに渡すな! あぶない教科書大阪の会」の相可文代さんは「森友問題と教科書問題の本質は同じ」と指摘する。

「小学校には育鵬社の道徳教科書はありませんが、学習指導要領が改悪されているので、教科書全体で愛国心や伝統文化が強調されています。検定意見によってパン屋の話を和菓子屋に修正したのもその一例で、政権の意向を忖度する教科書会社は少なくありません。本番は来年の中学校の道徳教科書の採択の年。育鵬社や自由社の教科書を絶対に阻止しなければなりません」

安倍政権の「教育改革」はさらに続く。3月31日に告示した「新学習指導要領」で、中学の保健体育の必修武道に銃剣道を追加した。戦前の学校の軍事教練に採用されていた銃剣道の復活である。また、幼稚園に続き、保育所でも「国旗・国歌に親しむ」ことを盛り込んだ「保育所保育指針」改定案をまとめた。こうした流れを受け、相可さんは警鐘を鳴らす。

「籠池氏が断念した小学校建設の『旗』を誰かが掲げる日も近いのではないでしょうか。今度はうまくやるでしょうね」
(終わり)

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