路上でスルメが売られている。2008年12月平壌の寺洞区域にて撮影リ・ソンヒ(アジアプレス)


◆収入求め人が殺到

「トンチュ」が作った「水産基地」は、船と漁具と燃料を準備し一般人を雇用する。
「清津市では若い男性には収入が得られるまともな仕事がないので、漁船に乗りたいという人が殺到している」と、咸鏡北道(ハムギョンブクド)の取材協力者が11月末に伝えてきた。彼は親族の男性が漁船に乗っている。待遇はどうなのか?

「取り分は船主が6で乗員たちが4。別途に白米を一カ月に15 キロもらっているそうだ」という。船の操舵を知る船長、機関長以外は海の素人だ。小舟で海に出るのは危険だが、仮に一航海で数万円の収入になれば、庶民にとっては大変貴重な現金収入になる。

◆経済制裁の影響は?

一部メディアでは、経済制裁の影響で食糧難が発生して、それを漁業で補おうとして無理をして遭難したという説明しているが、これは誤認だ。現在、北朝鮮全国のどこの市場でも食糧は大量に売られている。しかも、秋の収穫後間もなく、米もトウモロコシも今年最安値水準だ。そもそも魚介類は穀物の代替品にならない。燃料を使って獲った魚でカロリー摂取するというのは割に合わないのだ。イカ漁は金を稼ぐためにやっている。

経済制裁の影響の可能性として考えられるのは、燃料費の高騰だろう。外貨収入減と油類の輸入制限を見越し、北朝鮮当局は4月に供給統制に乗り出し、ガソリンと軽油の市場価格が二倍以上に急騰した。前述の取材協力者は「油の値段が高騰したため、安い粗悪品を混ぜて出漁してエンジン故障がたくさん発生している」と現地の状況を伝えてきている。

年二回のイカ漁シーズンは、小規模「水産基地」にとっても、乗組員にとっても稼ぎ時である。両江道(リャンガンド)の取材協力者は次のように語る。

「今年はスルメが品薄で値が高い。経済制裁のため貿易会社がスルメを仕入れなくなっているのに高値のままだ。以前は1キロ当たり30中国元(約510円)程度だったものが、今は40元(約680円)に上がった。スルメは保存がきくし軽いので密輸にうってつけ。正式な輸出ができなくても中国人の旧正月需要に合わせて密輸を狙っているのではないか」」

相次ぐ漂流船の正体は工作船などではなく、一獲千金を狙い、海の荒れる季節に無理をして出漁した「水産基地」のイカ漁船だと考えられる。

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