市有施設の違法工事をめぐり市と職員4人が書類送検された大阪府堺市で、違法工事現場を片付けるアスベスト除去工事さえ不適正だったことを市建築課が認めた。連載3回目の今回は現状を改めて考察する。(アジアプレス/井部正之)

◆「1か月後に清掃」目立つ対応の遅れ

2017年3月25日に堺市で開催された健康リスクの検証のための懇談会のようす。ちょうど煙突内のアスベスト除去直後だったが、取り残しの説明はなかった(井部正之撮影)

2月15日、被害者団体、中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会前会長の古川和子さん(堺市在住)ら堺対策チームが2017年3~4月の北部整備事務所における煙突のアスベスト除去工事について大阪府堺市を追及し、おもに以下の3点が判明した。

(1)2017年4月11日の作業後に分析機関が目視確認をしたところ、アスベストの取り残しが煙突上部から下部まで螺旋状に残っていることを分析機関が指摘。翌12日に手作業で再除去。だが、同15日の分析機関による目視確認で再び煙突上部は手つかずのまま残されていたうえ、再除去した中~下部においても取り残しが存在することが市が「保有しない」報告書で指摘。

(2)上記の取り残しについて、工事を発注した市建築課の担当者は「4月12日に一度(再除去に)入っております。で、この写真のあとには入っておりません」「それ以降は触っていない」と証言。ただし、建築監理課は「残っているという認識がない」。

2016年6月にアスベストを飛散させる違法解体があった大阪府堺市の北部地方整備事務所。となりの保育園に煙突を解体したコンクリートの破片が落ちてきたという(井部正之撮影)

(3)古川さんが実施した情報公開請求で開示された3つの報告書では除去作業後にも煙突内にアスベストの取り残しがあることを示す現場写真など計34ページが欠損。市と施工業者の打ち合わせ段階では存在しており、市が「必要ないものは外すよう指示した」。だが、具体的にどれを削除しろとの指示はしていないとも主張。

また前回の記事では触れなかったが、市に「存在しない」報告書には、2017年3月11日の除去作業前に実施した空気中のアスベスト測定の際、建物周辺に〈アモサイト(茶石綿)と思われる繊維が確認できた〉とし、さらに市建築課の担当者に報告したことも記載されている。

2017年3月19日、建物南側通路で見つかったアスベストの1つ、アモサイト(茶石綿)の繊維束。複同3月11日同様、複数箇所で確認されている(事業者提供資料より)

3月19日にも建物南側通路の複数箇所でアモサイトを確認している。かなり細かな繊維状であることが写真でわかる。違法工事後に適切な除染作業が行われなかった結果、9か月が経過しても細かなアスベストが散乱している実態がうかがえる。

2月15日の交渉時にこの点を指摘された市側はその事実を認めたが、「いわれて現地に本人が確認しにいったけどわからなかった」という。報告書の書きぶりからはその場で市職員に伝えたことがうかがえるが、市側は後に改めて現場を確認したとの説明だった。

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