◆誕生日は「文化の日」

ゴジラを(正確にはゴジラ映画を)語り部とした第一の理由は、映画はその時代の社会状況を必ず反映するということだ。もちろん、映画から社会状況を読み解くのであれば、ゴジラ映画以外にも素材は数多くある。怪獣映画ということであれば、ガメラでも良いだろうし、特撮のキャラクターということならば、ウルトラマンや仮面ライダー等々もその候補になり得る。それがなぜゴジラなのかというと、中断期間があるものの、第1作の公開から最新の第30作に至るまで、実に60年以上にわたって作られてきたシリーズ映画だからだ。

第二の理由は、ゴジラの誕生日(公開日)にある。第1作が公開されたのは1954年11月3日の「文化の日」であった。「文化の日」とは、「国民の祝日に関する法律」の第2条によれば、「自由と平和を愛し、文化をすすめる」ことを趣旨としている。日本国憲法が公布された日であり、憲法が平和と文化を重視していたことから、48年に「文化の日」と定められた。つまり、ゴジラは憲法と誕生日が一緒なのである。

◆原発開発とともに

第三の理由は、ゴジラの出自だ。これは後々明らかにしていくが、映画によってゴジラの出自が異なる場合がある。だが第1作では「水爆大怪獣」、つまり、太古から生き長らえていた恐竜が、度重なる水爆実験の放射能を浴びて変異し、棲息場所を追われて人類の前に姿を現したという設定になっている。54年といえば、3月1日に静岡県焼津港所属のマグロ延縄漁船「第五福竜丸」が、アメリカのビキニ水爆実験による放射能を浴びるという大事件があった年だ。また3月2日、改進党(当時)の中曽根康弘らが予算修正案として、原子炉構築予算2億3500万円を提出し、日本の原子力開発・利用が事実上のスタートを切った年でもあった。

要するに、戦争の傷跡が残る時代から現在に至るまで、日本社会を見続けてきた怪獣がゴジラなのだ。そしてまたゴジラは、日本の原子力開発・利用と共に歩んできた怪獣でもある。そのゴジラを通して、日本の戦後史を振り返りながら、私たちが忘れている先人たちの反戦・反核などの思いを掘り起こしつつ、改めて「平和憲法」の尊さを確認するのがこの連載の目的だ。

◆そのメッセージを世界に

映画制作会社の東宝は、2014年から「ゴジラ戦略会議」を立ち上げ、「日本の大スター」怪獣を世界に売り込むことを始めた。「ゴジラのモテ期」が到来したとして、今後は毎年新作を公開していくという。

だが、キャラクターとしてもてはやされるだけなら、単なる商品に過ぎず「文化」は伝わらない。ゴジラを生み出した背景や、映画に込められたメッセージを含めて、多くの人々に広める必要があろう。その思いもあって、この連載をスタートさせることにした。ゴジラに全く興味が湧かない方、ゴジラ映画を観たことがない方も多いと思うが、まずは第1作を読み解くことからお付き合いをお願いしたい。

(伊藤宏 新聞うずみ火編集委員 和歌山信愛女子短期大学教授)