◆ガリガリだった子供にショック

7月初めに咸鏡北道(ハムギョンプクド)のセッピョル郡の農村調査に赴いた別の取材協力者は、惨状にショックを受けたとして、次のように伝えてきた。

「ある粗末な家に行くと、農場員の息子が今年初めに結核で亡くなり、老母が幼い孫と暮らしていた。お金も食べ物も尽きて、近所の家からトウモロコシ3キロを借りて凌いでいると言っていたが、ちょうど貸した家の主人がトウモロコシを返せと催促にやって来た。子供はガリガリだった」

見かねた協力者は、コメ10キロ市場で買って置いてきたというが、
「もうコチェビ(ホームレス)同然という感じだった。あのままでは長くないかもしれない」
と述べた。

農場員の暮らしが悲惨だという報告は枚挙に暇がない。病弱者や老人だけの世帯には飢えて亡くなる人も出ているという情報もある。

では、なぜ生産者である農民が食べ物に事欠くのか? 北朝鮮は今も集団農業を続けているが、耕作地ごとに国家や軍隊に納める「計画量」が課される。それを上回る生産分は、農民が自由に処分できるのだが、「『計画量』の設定が高過ぎるうえ、昨年の干ばつの影響で、どの農場も生産不振だった。

にもかかわらず、農場の幹部たちは、上層部から強い「計画量」達成の圧力にさられる。そのため、農場員の暮らしぶりに関係なく、規定の「計画量」を無理に徴発する。農民たちは、一年働いて得られる分配では食べていけず、春からトウモロコシの収穫が始まる9月まで、「絶糧状態」になる世帯が続出することになるのだ。(カン・ジウォン/石丸次郎)

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