豆満江を越えてきた少年3人組。1998年4月延辺朝鮮族自治州で石丸次郎撮影

◆かつての辺境の地が有利に

国境に近い地域の北部住民たちが脱出する場合は、南部の住民に比べるとずっと有利だ。豆満江・鴨緑江までの接近方法や地形の条件をよく知っているし、どこに「10号哨所」があるかも把握しやすい。また国境警備隊員が村に下って来るので日常的な付き合いも生じ、買収しやすく、場合によっては脱出に目をつぶってくれる。

時には、現場の国境警備隊員が渡河を保証してくれる場合もある。この場合は、「密輸のため」や「親戚に援助してもらうから」と言って渡河し、帰りに「通行料」を支払うのが普通だ。

現場の国境警備隊員は腐敗がはなはだしく、密輸屋や越境の世話を商売にする地元住民とグルになって渡河の「通行料」を取る。片道100中国元(約1500円)から500元ほどを取る。

98年ごろまでは国境警備隊員も満足に食事をしていないケースが多く、時には、警備隊員自身が越境して中国側の村落で食べ物を乞うような事例もあった。

現場の国境警備隊員が地元住民と、馴れ合いの関係になって統制の乱れが著しくなると、数ヵ月ごとに部隊の配置を換えたり、部隊への監察を強化するなどの処置が取られた。

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