(参考写真)中学生くらいのホームレスの少女が、市場の中で練炭の暖を取っている。2012年11月両江道恵山市にて 撮影「ミンドゥルレ」(アジアプレス)

◆制裁の影響で民生悪化

地方都市で物乞いする子供や老人が増加している。

北部の咸鏡北道会寧(フェリョン)市に住む取材協力者は、5月後半に市内の市場に通い、「コチェビ」と呼ばれる浮浪児、浮浪者について調査した。会寧市では、昨年末まで「コチェビ」の姿はほとんど見られなかったが、今春になって数が明らかに増えているという。

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協力者の報告を記そう。

◆物乞い老人は「孫に食べさせるものがない」と泣いた

「コチェビ」は、今年初めは6~7人程だったが、今回、市場で数えてみると20人ほどに増えていた。以前は子供ばかりだったのに、高齢者、中年層の男性もいた。

市場にいる子供の「コチェビ」は、見たところ8~16歳くらいが大部分だ。子供たちは、市場の入り口や食べ物を売る店の周辺で物乞いをしたり、食べ物屋台の客に空腹を訴えて施しをねだるのだが、実際に分け与える人は多くない。

5月24日、市場で食べ物を盗んで叩かれていた14歳くらいの男児に話を聞くと、「両親はともに死んでしまいました。家は金策(キムチェク)市です」と答えた。

5月27日、市場で物乞いをしていた二人組に声をかけた。12歳くらいの女の子と9歳くらいの男の子だ。「咸興(ハムン)市の沙浦(サポ)区域から来ました。お母さんは商売出たきり戻らず、お父さんは病気で死にました」と答えた。
※金策市は東海岸沿いの都市で製鋼所がある。咸興市は北朝鮮第二の都市で大規模国営工場が多い。

浮浪児に混じって、物乞いする高齢者の姿も目に付いた。ヒマワリの種を売りながら物乞いする老人がいた。かなり汚れたボロを着ていたので、見かねてヒマワリの種を買うと、泣きながら「助けてください。孫に食べさせる物がないんです」と訴えた。

これまでは「コチェビ」を取り締まる組織があって、すぐに検挙していたし、人民委員会(地方政府)の予算で服を着せたりもしたが、最近は放置したままだ。理由は、「コチェビ」の数が増えたことと、子供だけでなく中年男性や年寄りの物乞いまで現れたためだ。取り締まりまっても収容する場所がないのだ。市場管理員たちは、「コチェビ」が集まっていると、市場の外に追い出すだけだ。
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