◆市場価格の基準は中国米

実は、北朝鮮の白米の市場価格は、輸入された中国米が基準になっている。中国米は現金購入であれ、輸出の対価であれ、輸入には当然コストが発生する。それに商人の利益を上乗せされたものが市場価格になる。北朝鮮の中~北部地域では、市場の米価は中国元で値付けされており、この2年間、ずっと1キロあたり3.2~3.6元程度である。

中国米のほとんどは収穫から時間が経った古いコメだ。新しくて粘り気のある国内産米の方が人気が高く、中国産より5%程度高いというのが、この20年間変わらぬ相場になっている。

つまり、北朝鮮ウォン表示の米価は、需給のバランスによる変動よりも中国元の実勢交換レートに左右されるのだ。瞬間的な上昇下落をはじくと、概ね中国元レートによって米価が上下しているのが、前述の物価推移調査にはっきり現れている。

すなわち、米価の安定は北朝鮮通貨の安定を意味しているわけだが、これが不思議なのである。経済制裁によって2018年度の北朝鮮の輸出は約90%減った。著しい外貨収入減の中で、外貨交換レートがずっと安定しているのはなぜなのだろうか? 経済専門家のお知恵を借りたいところだ。

(参考写真)国産米に混じって中国産米も大量に売られている。価格を尋ねると中国通貨で答えた。2013年10月北部国境都市にて撮影(アジアプレス)

◆民衆の大多数は配給なしで自力で生活

現在、北朝鮮の食糧配給制度はほぼ崩壊しており、既存の統制経済システムによる配給を受けているのは、軍需工場、ごく少数の一般国営企業、党、行政の職員、警察などの公安機関、人民軍の将校くらいである。

それも、妻や子供、引退した親などの扶養家族分は支給されないケースがほとんどだ。(一般兵士は、配給ではなく国家による給食)。国家配給が維持されているのは人口の20%程度だと、筆者は見ている。

最近では、企業の裁量で給料や食糧を労働者に出している企業が増えているが、支給されるコメやトウモロコシは、国家が供給しているのではなく、企業が市場で調達している。つまり「報酬の現物支給」であり、配給ではない。このような企業は中国との合弁が多い。

では、配給のない大多数の国民はどうしているのか? 国家統制を離れて自力で現金を得て、市場で食糧を購入している。市場の販売価格は、食糧流通の統制に未練がある当局が、「限度価格」と呼ばれる上限を定めているが、まったく有名無実になっている。