2016年4月のケイ氏の来日調査にメディアは高い関心を見せたのだが…。撮影藤田早苗

◆メディアに対する勧告 「団結して戦う力が弱い」

特別報告者からの質問には、メディア関係者への勧告に関するものもあった。
〇公共又は民間の放送と印刷メディアのグループは編集活動やジャーナリストへの直接または間接な圧力を防止するための措置を取ったか?
〇物議を醸す話題の調査報道をしているジャーナリストを支援する何らかの措置は取られたか?
〇記者クラブ制度について、特にその会員の枠を広げる試みなどの改定は行われたか?

2016年の勧告は政府だけでなく、メディア関係者にも向けられていた。
例えば、記者クラブ制度の問題の改善である。ケイ氏の報告書では、この制度が大手マスコミによる情報へのアクセスの独占を生み、「情報を取る」ために権力に寄りあう、いわゆる「アクセスジャーナリズム」を促進して調査ジャーナリズムを制限し、その結果メディアの独立性への障害となっていることが厳しく指摘されている
(パラグラフ3.2~3.6)。そしてこの問題は国内でも多くが認めるところである。しかし、ケイ氏のメディアへの勧告についてマスコミはほとんど触れない。

ケイ氏の勧告に基づき、マスコミはこれらの点を改善すべく何らかの措置を取ったのか? 少なくともそういう議論を始めたのか? マスコミが、自分たちに向けられているケイ氏の勧告には言及せず、「政府によるメディアへの圧力が特別報告者により指摘されている」と強調するだけでは、報告書の目的を達成するのは不可能である。2016年の記者会見 (※8)でケイ氏は、民主主義でメディアへの攻撃が起きるのは普通のことで、緊張感も普通であり、むしろ健全なことである。でもそういう圧力があるときに、日本はメディアの構造として団結して戦う力が弱い、と指摘しており、(※9)先日もジュネーブで筆者とそういう話をした。また戦うジャーナリストを支える日本の市民社会の弱さにも触れていた。(続く)

※7 2018年の放送法改定に関する議論について
「焦点:動き出す放送法改正、政府は公平規制緩和に意欲」ロイター2018年3月26日
https://jp.reuters.com/article/japan-broadcasting-idJPKBN1H20C6
「「政治的公平」の放送法4条、撤廃明示せず 政府会議」朝日新聞2018年4月16日
https://www.asahi.com/articles/ASL4H5339L4HULFA004.html
※8 デビッド・ケイ 記者会見 (2016年4月19日)関係
国際連合広報センター プレスリリース 「日本:国連の人権専門家、報道の独立性に対する重大な脅威を警告」
http://www.unic.or.jp/news_press/info/18693/
動画 https://www.youtube.com/watch?v=oqPJFsY7VWE
書きおこし 「日本で強まる報道規制と表現の自由の危機-デビッド・ケイ教授が訪日記者会見で語る」
http://logmi.jp/139415
※9 日本は「メディアの構造として政府からの圧力に弱い」 国連「表現の自由」報告者が語った「脆弱性」とその原因 J-Cast News 2016年4月19日
https://www.j-cast.com/2016/04/19264575.html?p=all

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藤田早苗(ふじた・さなえ)
エセックス大学人権センターフェロー。同大学にて国際人権法修士号、博士号取得。名古屋大学大学院修了。秘密保護法、報道の自由、共謀罪等の問題を国連に情報提供、表現の自由特別報告者日本調査訪問実現に尽力。