ロシア国境警備隊に拿捕された北朝鮮のイカ漁船。2019年9月ロシア連邦保安局提供写真


◆ロシア水域の密漁では銃撃も

10月7日に、日本の水産庁の漁業取締船と衝突して北朝鮮漁船が沈没した事件は、救助された約60人が、出現した別の北朝鮮船に引き取られて幕引きとなった。

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北朝鮮の日本海でのイカ漁シーズンは初夏と9~11月の二回。まもなく日本海は荒れ始めるので、漁期が終わりに差しかかった今、駆け込みでイカを獲ってしまおうと、好漁場の他国の排他的経済水域(EEZ)に入ってきたものと考えられる。

北朝鮮船のイカ密漁はロシア海域でも相次いでいる。9月中旬から日本海のロシアの海域で北朝鮮のイカ漁船が相次いで拿捕されており、AFP通信などによると、ロシア当局は数百人を拘束、10月2日にはロシア国境警備隊の銃撃で北朝鮮漁船員5人が負傷したという。

イカ漁は金になる。ほとんどが中国向けに輸出される。しかし、国連安保理の経済制裁で、2017年以来、海産物の輸出は全面禁止された。そのため、昨年と今年上半期は、北朝鮮のイカ漁は低調だった。獲っても売れないため、漁業者の撤退が相次いだのだ。

ところが、6月中旬に習近平中国主席が北朝鮮を訪問してから様相が変わった。朝中国境での密輸取り締まりが緩くなったのだ。北朝鮮東海岸から好漁場の日本のEEZまで約400キロある。燃料代を差し引いて利益を出そうとすると、販路が必要だ。イカを中国に密輸できるようになったため、他国のEEZに侵入してでも獲ろうとしたのであろう。

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