愛知県豊橋市が発注した解体工事で施工業者が仕様上の手順を無視し、アスベスト(石綿)が外部に飛散しかねない違法な作業を実施、豊橋労働基準監督署から作業停止を命じられた。ところが、説明会で業者側はトンデモ発言を連発したのだ。(井部正之/アジアプレス)

現場のはりに散乱している吹き付けアスベストの残存物。こうした残存がはりの上に点々とあるという(豊橋市提供)

◆業者「少量だから飛散しない」

「空気中にものすごい飛散しとるとか、そんなものじゃない。マスコミに大きくアスベスト、アスベストと出ているけど、大騒ぎしすぎなんですよ!」

こうマスコミではなく、住民を怒鳴りつけたのは違法工事をした愛知県豊橋市の林光土建(同市牟呂町)の林東吉社長。11月6日夜、現場からもほど近い、市の施設で開催された説明会の席上である。

豊橋市から旧生活家庭館(同市高師町)の解体工事を約3840万円で請け負った同社は9月4~5日、解体する3つの建物の1つ、大集会室の屋根裏のはりに吹き付けアスベストが残存していたにもかかわらず、法に定められた飛散防止対策を講じないまま屋根を撤去した。その結果、同27日まで3週間あまり吹き付けアスベストが風雨にさらされ、飛散しかねない状態となっていた。

同27日に市建築課が現場を訪れ、違法工事が発覚。あわてて業者に養生などを指示。同社はようやく同日に固化剤を散布し、翌28日にブルーシートで現場を覆う応急措置をした。

その後、台風などで2回養生が崩壊。そのたびに作業をやり直し、ようやく10月30日に一定の養生を完了し、作業停止命令が解除された。

6日の説明会は同社が住民に初めて違法工事を謝罪して経緯を説明し、工事再開に向けて理解を得るための場だった。

林社長は当初「多大なるご心配とご迷惑を掛けた」と謝罪した。しかし、10分と経たないうちに、以前の除去後に「点々と残っていた」「いくぶん残っていた」と残存する吹き付けアスベストが少量であることを強調し、冒頭の発言をしたのである。

さらに「(法的には)ダメですけど、そんなに(騒ぐことではない)、と思います。空気中に飛散したり、そういう害はない」などと持論を展開した。

しかし、「石綿のことは素人」と自認していたとおりのトンデモ発言といわざるを得ない。

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