◆英国外務大臣のメディアに対する見解

世界では暗殺などによるジャーナリストの犠牲者が、近年特に増えている。そのような現状を憂い、今年イギリス政府がイニシアチブを取って5年間のグローバルキャンペーンを立ち上げ、7月にはカナダ政府と共催の大きな会議がロンドンで二日間にわたって行われた。そこには、デビッド・ケイ氏などの多くの専門家と100か国の政府の代表、加えて世界中から1500人のジャーナリスト、活動家、研究者などが参加した。筆者もこれに参加したのだが、その全体集会のスピーチで、このキャンペーンの発起人であるジェレミー・ハント英国外務大臣(当時)が次のように言ったのが印象的であった。

「メディアが自分について書いているのを読むのは必ずしも好きではない。(中略)そしてもちろん、新聞は間違うこともある。ジャーナリストは誇張や行きすぎた表現をしたいと思う誘惑にもあう。(中略)しかし、我々政治家が十分に賢明なら、ジャーナリストを我々の“批判もする友達(Critical Friends )”としてとらえることができる。メディアは我々が望もうとも、望まなくとも、ありのままの現実を提供して我々が聞かなければいけないことを教えてくれる。」

政治家が良い政治をしていくためにはメディアの監視は欠かせない、と彼は明言した。記者と政治家は対等の地位にあるのがわかる。しかし、このような政治家の態度もメディアとの関係も、今の日本には残念ながら見受けられない。

また、メディア側にも課題は多い。例えば官房長官の記者会見を巡っては、望月記者の質問中に司会役の報道室長が「簡潔にお願いします」などと数秒おきに質疑を妨げている問題もある。その場にいる他社の記者はその問題をどうとらえているのだろうか。ネパール出身の法律家の友人にこの質問妨害の件を話したら、彼女は笑いながら「そういうことがネパールでおきたら、他の記者もみんな退室して抗議するだろう」と言っていた。

記者が会社の枠を超えてともに抗議する連帯は、米国でもホワイトハウスが、ドナルド・トランプ大統領と舌戦を繰り広げた民放CNNのジム・アコスタ記者の記者証を取り上げられ時、論調がCNNと大きく異なるFox Newsを含むメディア10社も一緒になって抗議したケースでも見受けられた。しかし、そういう連帯が日本ではほとんど見られない。

デビッド・ケイ氏が「日本のメディアは圧力に対して連帯する横のつながりが弱い」、と強調していた通りである。またケイ氏も言うように「日本における報道の自由の長期的発展と役割を確実にするために、政府、記者そして報道機関には、慣行や政策に関して改めうる点がある」のであり、政府もメディアもその改善に取り組むべきだ。

(3)デビッド・ケイ氏から日本政府への通知書
英語原文 
https://spcommreports.ohchr.org/TMResultsBase/DownLoadPublicCommunicationFile?gId=24689
和訳全文 https://bit.ly/2rIcO5B
http://www.nagoya.ombudsman.jp/himitsu/190709.pdf

(4)日本政府からの回答
英語原文 https://spcommreports.ohchr.org/TMResultsBase/DownLoadFile?gId=34856
和訳全文 https://bit.ly/2rIcO5B
http://www.nagoya.ombudsman.jp/himitsu/190709.pdf

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藤田早苗(ふじた・さなえ)
エセックス大学人権センターフェロー。同大学にて国際人権法修士号、博士号取得。名古屋大学大学院修了。秘密保護法、報道の自由、共謀罪等の問題を国連に情報提供、表現の自由特別報告者日本調査訪問実現に尽力。

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