◆輸入支援物資も消毒して20日間留め置き

北朝鮮では、1月末に中国国境を封鎖した後、国内で感染の可能性のある人たちを漏らさず隔離しようとした。風邪の症状のある人は自宅から出さず、過去に少しでも外国人と接触した可能性のある税関職員や貿易会社員、また彼らと接触した人たちを、職場の倉庫や事務室などに30~40日間も隔離した(幹部の場合は旅館)。PCR検査機器や試薬がまったく足りず、感染の有無を判定する方法がなかったため、無条件隔離策を採ったと思われる。

中国やロシアからの防疫支援物資は、2月後半から徐々に入り始めたが、要人とその周辺、平壌から使用されたであろうことは想像に難くない。アジアプレスの内部調査では、消毒剤が地方都市に配布されたのは5月後半になってからで、それまでは多くの場合塩水を使用していた。PCR検査機器もまったく足らない状況が続いている。

さらに内部文書は次のように書く。

「輸入物資を取り扱う新義州(シニジュ)青年駅と豆満江(トゥマンガン)駅を通じてウイルスが流入するかもしれないという問題が提起され了解(確認作業)を行いました」

「新義州青年駅」は、言うまでもなく中国遼寧省の丹東と結ばれる北朝鮮最大の通商口だ。7月中旬時点で、まだ強い通行制限が続いているものの、生活必需品を中心に少量の輸入が再開されている。

「豆満江駅」は咸鏡北道(ハムギョンプクド)の東端にあり、唯一ロシアと鉄道で連結されている通商口だ。ロシアから物資搬入について調べた取材協力者は、6月初めに次のように伝えてきた。

「4月末頃から、ロシアから鉄道を使って食用油や医療品、小麦粉が輸入され始めた。これは通常貿易ではなくロシアの支援品で、扱っているのは中央党傘下の貿易会社だけだ。貨車がロシアから入ると、駅舎で荷物を消毒・封印して20日間留め置き、一般人の接近を禁じている」

7月2日に金正恩氏が防疫体制の緩みを強く批判・警告する以前に、政権内ではコロナウイルスの国外からの流入と、国内での感染拡大阻止に、強い対策を取ることを決めていたのではないか。入手した内部文書はそのように読み取れる。

北朝鮮地図(製作アジアプレス)

◆軍部隊でコロナ発生の情報が

この内部文書を検討している最中の7月初旬、注目すべき情報が飛び込んできた。平壌南方の沙里院(サリウォン)の軍部隊でコロナウイルス感染が発生しているというのだ。(続く 2 >>

※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。