国産のペニシリン。品薄でニセ薬が出回っているという。2015年4月北朝鮮国内で撮影アジアプレス

◆中国製枯渇の上、支援品も搬入拒否の異様

今、一番困っているもの? そりゃ薬ですよ、どこにも売ってないから
北朝鮮北西部の平安北道(ピョンアンプクド)に住む女性の弁だ。金正恩政権が新型コロナウイルスの流入防止のために中国国境を封鎖して間もなく11カ月。中国製品の輸入がほぼ途絶えた今、もっとも深刻なのは中国製医薬品の枯渇だという声が多い。平安北道と両江道(リャンガンド)で調査した。(カン・ジウォン

中国税関当局が11月末に発表した貿易統計は衝撃的だった。10月の朝中間の輸出入総額は165万9000米ドルで前年同期比99.4%減、北朝鮮の輸入はわずか25万3000ドルに留まった(同99.9%減)。

2月から続いていた貿易の減少は、8月以降顕著になった。政権がコロナ流入を警戒して輸入統制を強化したこと、外貨不足に陥って輸入がままならなくなっていることが理由だと考えられる。

あらゆる中国製品が不足する中、住民の暮しに深刻な影響が出ているのが医薬品の枯渇だ。
両江道の取材協力者は現状を次のように説明する。

ケガや病気で病院に行っても意味がない。寒いし薬がないから治療もしてもらえない。病院にも薬がないのだ

この協力者が医療関係者を取材したところ、次の中国製医薬品の枯渇が深刻だということが分かった。ほぼ入手不能で、どこにも売っていないという。
・アモキシシリン(抗生剤、気管支炎などに使用)
・メトロルニダゾール(抗菌薬、感染症に効果、婦人科でよく使われる)、
・セフォタキシム(抗生剤、感染症に使用)、
・セファロスポリン系抗生剤(大腸炎や腸チフスなどに効果)

また、中国製大衆薬の「鎮痛片」という鎮痛剤、各種点滴剤、風邪薬、湿布も、病院や薬局から姿を消したという。

風邪薬、鎮痛剤は闇で一錠ずつ売っているが、以前は300ウォンだったのが5~7倍なっている。それでも入手難しい」と協力者はいう(100ウォンは約3.6円)。中国からの輸入が止まり、横行していた病院関係者による横流しもできなくなっているという。

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