仕事で新型コロナウイルスに感染したとの理由による労働者災害補償(労災)保険の申請が急増している。前月の12月からほぼ倍増し、今年1月の1カ月間で初めて1000件を超えた。専門家は「感染経路不明でも認定の可能性がある」として労災申請するよう呼びかけている。(井部正之)

仕事で新型コロナに感染した場合の労災申請を呼びかける厚労省パンフ。外国語版は作成中という

◆労災申請、2月も最多更新か

厚生労働省の発表によれば、新型コロナによる労災申請は2020年3月が最初だ。その後同6月に370件を数えて以降、300~400件を推移。「第3波」とされる11月以降の感染拡大を受け、12月に538件に増加。緊急事態宣言が再発令された1月には同29日までで1070件とほぼ倍増した。

2月については、同17日に公表された12日午後6時までの最新データですでに804件。最多申請数を更新するのはほぼ間違いないとみられる。

累計では2月5日午後6時時点で申請数が計4045件と初めて4000件を突破した。同12日までで計4640件に上る。決定件数2230件のうち認定は「医療従事者等」1652件(95%)、470件(97.7%)、「海外出張者」10件(90.9%)で総じて認定率は高い。

ところが感染者数と比較すると、まったく違ってくる。

2月12日までの陽性者数は計41万3154人のため、申請率は1.1%。仕事以外での感染が約99%を占めるとはさすがに考えにくく、「少なすぎる」との印象だ。

労災認定の支援などをしているNPO「東京労働安全衛生センター」事務局の天野理氏は「職場関連で1%はない。少なすぎます」と断じる。

その理由はこうだ。

「業種別でみても医療・介護など医療従事者で85%を占めていて、それ以外が少なすぎる。とくに製造業は(2月5日までで)66件しかありません。工場などで100人を超える集団感染が出ているところがいくつもあるので、どう考えても少なすぎる」(天野氏)

同省発表では「医療従事者等」3577件(77%)に対し、「医療従事者等以外」1051件(22.8%)、「海外出張者」12件(0.2%)。

しかし、実際には「医療従事者等以外」に「医療業」「社会保険・社会福祉・介護事業」の事務職が分類されており、それを「医療従事者等」に分類し直すと3956件(85.3%)に跳ね上がる。

また製造業の申請件数は同12日までのデータでは73件に増加している。だが、たとえば熊本県の造船所で2020年8月17日までに115人の集団感染が発生しており、その1件だけで現状の申請件数を上回ってしまう。天野氏のいう通り、さすがに少なすぎるといわざるを得ない。

それでも同省補償課は「感染者との比較はしていない。多いとも少ないともいえない」と他人事のような回答だ。