北朝鮮の漁業が、過剰な新型コロナウイルス防疫対策のため不振を極めている。小規模漁船は出港を禁じられ、軍や党などの機関傘下の水産事業所だけが出漁しているが、それすらもコロナ対策の流通統制で、うまく経費を回収できていないという。零細漁民は食べ物にも事欠く状況だと咸鏡北道(ハムギョンプクド)の取材協力者が伝えてきた。(カン・ジウォン

日本のEEZに出現した北朝鮮の木造漁船。2018年7月下旬(海上保安庁提供)

◆海岸接近禁止 漂着ゴミには触るな

取材協力者が東海岸の清津(チョンジン)市の新津(シンジン)港の漁業者から聞き取りした内容によると、コロナ流入遮断を理由に、小型船は長期間にわたって港から出ることを一切禁じられている。保衛省、軍、党などの権力機関傘下の水産事業所の中・大型船だけが出漁を許可されており、「一般漁民は海を眺めながらも何もできない状態」だという。

海岸や港でのコロナ防疫対策は過剰だ。海岸への接近を禁止し、漂着したゴミに触れるのもご法度だ。浜でワカメを拾うこともできないという。「コロナは海から入って来る可能性がある」という防疫基準による措置だ。

北朝鮮では、本来個人が船を所有して漁をすることはできないが、金を払って機関所属の船として登録させてもらい、人を雇って漁労をする概ね船員10人未満の小型船舶が20年ほど前から多数出現し、漁業の中核勢力に成長していた。数年前に日本沿岸に多数漂着した小型イカ釣り船がその典型である。

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◆海上脱北を警戒

大型漁船に対する規制も厳しい。乗船人員を制限したうえ、発熱チェックはもちろん、出・帰港時の消毒を徹底、船員が作業で着ていた服のまま市内に入ることも許されないという。

当局が出漁を強く統制しているのは脱北を阻止する目的もある。過剰なコロナ対策で、北朝鮮経済は悪化の一途をたどっており、東西の海岸から出漁を装って出港し、そのまま南下して韓国を目指す「海上脱北」が増えることを警戒しているためだ。

「漁船に乗るには3人の保証人が必要だ。もし脱北する者が出た場合、保証人は連帯責任を負うやり方だ。出港の規制が強化されたため、取り締まり機関に渡す賄賂の負担が増えている」と協力者は説明する。