(参考写真)鴨緑江の川べりに座り込んで話す若い男女。平安北道の朔州郡の様子を中国側から2019年9月に撮影石丸次郎

◆ 「電気は1日に1~3時間だけ」

北朝鮮で住民への電力供給がさらに悪化している。農繁期の営農用、工業用に電気を回せという当局の指示があり、「住民線」と呼ばれる民生用にはほとんど供給されない状態だという。また、電気の不正使用に対する取り締まりも厳格になっている。最新の事情について、北部地域に住む複数の取材協力者に聞いた。(カン・ジウォン

北朝鮮北東部、咸鏡北道(ハムギョンプクド)の会寧(フェリョン)市。これといった産業はないが、金正日の生母・金正淑(キム・ジョンスク)の生誕地として、都市整備の面で優遇されてきた。推定人口は15万人だ。

この会寧市に住む工場労働者の取材協力者は、5月以降の電気事情のひどさを次のように伝えてきた。彼は労働党員で市中心部のアパートに暮らす。

◆農業と工場優先で住民の電気カット

――電気供給の現状はどうか?
ひどい状態だ。「住民線」の供給は1日にたった1時間くらいだ。携帯電話の充電にも苦労している。

――悪化の理由は何か?
理由はいくつかある。一つは、今農繁期なので田植えなど協同農場の営農作業が優先されている。当局が経済発展5ヵ年計画の課題を遂行せよと号令をかけているため、工場、企業所の「工業線」にも優先供給されていて、「住民線」の供給をカットさせている。農村と「工業線」は一日に8時間供給されているが、例年よりずいぶん短い。

そもそも電力生産自体が相当に落ち込んでいる。これまで全国に中小型の水力発電所を数多く建設したが、山の木を伐採したため(保水力がなく)、水が干上がってしまった川が多い。

それから、新型コロナウイルス防疫で中国国境を封鎖したため、中国から機械部品が入って来なくなって故障した発電機の修理ができないのだ。安定した電気生産ができていない。現在、農作業に総集中しているけれど、ポンプを動かす電気も不足している有り様だ。それで不法な電気使用を集中的に取り締まっている。

◆幹部の盗電行為も処罰

――「電気泥棒」の取り締まりですね。
そうだ。幹部らが「工業線」を勝手に家に引いて使用したり、商売人が菓子やパン、アイスキャンデーを家で作るのにコネを使って配電してもらったりするケースを徹底的に調査して厳しく処罰している。道党、検察、人民委員会(地方政府)の幹部で構成された取り締まりチームを作っている。人民班長が息子まで動員して、登録されていない電化製品や電熱器を使っていないか、探し回っている。

――電力メーターを各家庭に設置させ使用量に応じた料金を支払う制度が導入されたのではなかったか?
無理をして電力メーターを設置させたけれど、また家にある電化製品を調査して、それに合わせて支払わせている。アパートでは電気使用料金が未納だと、通電を遮断する機械まで設置している。

電気が来ているたった1時間が、また煩わしいのだ。韓国ドラマなど外国の録画物を見ていないかを取り締まるため、電気が来ている時間を狙って「非社会主義検閲グルパ(グループ)」が調査に来る。